名称未設定

@shu__mai__

第1話 名前も顔も知らない君

高二の冬、初めてsnsで音楽垢というのを作ってみた。音楽垢というのは好きなバンドなどをフォローしたり、バンドのファン同士で交流などをすることを目的としたアカウントのことだ。自分はまだやり方がわからないので取り敢えず好きなバンドを手当たり次第フォローしていた。

最初は画面を開けば好きなバンドばかりが出てくることだけで満足していたが段々と他の人ととも繋がってみたいと欲が出てきた。

そこが始まりだったのだと今は思う。

 ハッシュタグをつけ、自己紹介プロフィールというのを貼り付け投稿するだけでプロフィールに書いてあるバンドが好きな人と繋がれる。ものすごく便利だ。

そして驚いたのがものすごい数のいいねがつくことだ。やはりいいねの数だけ皆も繋がりたいのかと思った。色々な人と繋がりを持った。歌詞が好きな人、ボーカルの顔が好きな人、メロディが好きな人、世界観が好きな人、星の数あるほどあるバンドの一つでこんなに好きと言う感情を生み出せるものかと、

全バンドの色々な好きという感情を合わせたら銀河くらい余裕なんじゃとも考えていた。このバンドを好きになってよかったと本当に思った。最初は新鮮でとてもたのしかったが段々と慣れていくもので、最近は開くのもめんどうだと思っていた。だがすごくめんどくさくても開かないといけない理由があった。

『ふき』というユーザーネームでやってる子ととても仲良くなってしまったからだ。

自分はめんどくさがり屋なのですぐに関係が切れるように人と親しくするのを避けていた。なのにこのふきという子は人懐っこいのか自分がどんなに避けようとしても知らん顔で話しかけてくる。自分が避けようとしてることに気づいていないのかそれとも気づいて話しかけているのだろうか?

なぜ両方とも話すことが前提の考えなんだろうとも思いながら話をしていた。

話している中で色々とその子のことがわかった。同じバンドが好きなこと、一個下なこと、誕生日が二ヶ月しかずれていないこと(二ヶ月は同い年!とふきは言い張る)、東京に住んでるということ、タメ口しかできないということ。

だがこんなにも知っているのに、顔も名前も知らない。本当に不思議だ。

いつの間にか、バンドの事より、ふきのことをもっと知りたくなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

名称未設定 @shu__mai__

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る