第22話 二色羽イリュ厶

  その翠紅の翼を見た自軍の砦のエルフィン族の防衛兵たちの顔に焦りが見え始める。


「やっぱり、出張ってきやがった。あの二色羽……ジョースケ気をつけて、あいつかなり強いよ」


リティナが強張った表情でそう伝えてくる。


俺も二色羽の女戦士がヤバい奴だと直感的に感じて、そいつを真っ先に潰そうとする。


「どうせまぐれだ、さっさと落ちろ」


俺はそう自分に言い聞かせてレーザーを連射する。だが、正確に狙ったはずの光線の嵐を二色羽はいとも簡単に避ける。


その結果に俺は一瞬だけ怒りがこみ上げる。


「確かに天羽族は至近距離でショックガンの光線を避けたけど、アレの数倍の速さのレーザー兵器をなんでこいつは避けれるんだ……あいつ頭おかしいぜ……」


俺は何度も二色羽を狙い続けるが、奴は嘲笑うように光線を避けていく。そして、二色羽をかまけていたせいで天羽族の軍が奇襲から立て直す猶予を与えてしまった。


そうなると、奴らは瞬く間に密集した陣形から分散して一斉にこちらに向かってくる。その先頭に立っているのはやはり二色羽だ。


「このままじゃ埒が明かねぇ!」

  

俺は二色羽を諦めて、他の敵に狙いを定めて撃っていく。だが、統率の取れた小魚の群れのようにレーザー光線を避けて被害を最小限に抑えて、依然として突撃の姿勢を崩さない。


「サウナ砲構えー! 撃てー!」


「くそっ、手応えがあまりない……」

 

サウナ砲も加勢して射撃を開始するが、敵の撃墜数が当初の予定の半分にも満たない数であり、かなりまずい状況だ。


「ねぇ、どうするジョースケ。このままじゃ数で押されちゃう」


「大丈夫だ、この距離ならアレが有効なはず」


焦るリティナに俺はそう言うと、サウナ砲班の面々に例の弾を使えと指示する。


「ジョースケさん、弾の装填準備完了です」


「よし、撃ってー!」


サウナ砲か放たれたその大きめの弾は勢いよく敵の群れに向かっていながら、空中で分解する。そして、その中からキラキラと無数の煌めきが敵の群れを襲う。


「あああ」


「うッ」


何にも天羽族の兵士たちが一斉に苦痛の声を上げて落ちていく。さっき撃ったのは余剰に作っていた小粒ダイヤを詰めた弾だ。


この攻撃には天羽族の群れも動揺が隠せぬようになり動きに無駄が生じ始める。


俺もその隙を逃さずに一心不乱に連射していく。ついに、敵はエルフィン族の弓矢が届く距離まで迫っていた。


「弓隊、構え!  撃てー!」


女指揮官たちも一斉に応戦しはじめる、一方の天羽族側も武器を構えて攻撃を仕掛け始めた。


俺たち班の目標撃墜数は想定よりも少しだけ少ないがなんとか役目を果たした。そして、戦いのフェーズは乱戦状態へと移行していく。


しかし、戦況は天羽族側が士気も高く攻勢が激しかった。その最大の要因になっていたのは、鎌鼬のように味方を次々に倒していく二色羽の存在であった。


「どうにかしてあいつを止めないと全滅しちまうが、この距離なら当たる!」


レーザーを避けようがない距離に勝利を確信した俺は二色羽を捉えてぶっ放す。


戦いは一気にこちら側に傾くかに思えた……


 だが、二色羽は紙一重でレーザーを見切って躱す。そして、奴は攻撃してきた俺のことをその鋭く凍てつくような目でこちらをはっきりと捉えていたのだった。

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