第21話 翼を撃て
「天羽族の数は500。予想通りのルートで進軍しており、数時間後には接敵すると思われます」
斥候兵のリティナが拠点キャンプからやってきた女性指揮官に戦況を報告する。
「了解したわ。聞いての通り、天羽族の本隊との戦闘は間近よ。各班は今のうちに英気を養って戦いに備えるように、以上」
そうして、軍議が終わると俺は女性指揮官に声をかけられる。先程の威厳溢れる様相から打って変わって、気さくに
「君がジョースケ君だね、噂はかねがね聞いてるよ。なんでも君の香りは甘美で快楽的になれると聞いたのだが本当かい?」
「効能は知りませんが、疲れてる時に変な臭いはしてるらしいです」
「へぇー、じゃあこの戦いが終わったら私も嗅いでみたいな」
まったく戦とは関係ない話をされて、俺は正直驚く。それと同時にやっぱりこの体臭は趣向品みたいな扱いされるんだと実感する。
「まぁ、それは置いといて。君に聞きたいんだけど、この砦の敷地内にある変な装置は一体何のためにあるんだい?」
「さすが、指揮官お目が高い」
この質問を待ってましたと言わんばかりに俺はレーザー兵器と発電場などの説明をする。
当初は女性指揮官の反応は芳しいものではなかったが、試し打ちでぶち抜いた木の穴を見せたら信じてくれた。
「確かに、魔術を使った痕跡もなくこれほど綺麗な木の断面を見るに相当な威力だね、大したものだよ」
「これ、連射できるですよ」
その言葉を聞いた女性指揮官は感銘した様子で
「すごいすごいよ、この戦いは楽に勝てそうだ」
と言って、女性指揮官は興奮気味にその場を後にして各班を激励しにいった。
一方の俺も防衛装置の最終調整をして決戦に備えるのであった。
◎○▲
「天羽族を肉眼で確認」
「よし、皆のもの。一人でも多くの敵を討ち果たすぞ」
女性指揮官が兵士ら鼓舞し、いよいよ戦いが始まる。
天羽族の奴らはまだこちら側に気付いておらず警戒する行動は取られていない。
「俺が一番槍とは誉れ高いけど、なかなか緊張するもんだな……」
「ジョースケならきっとうまくできるよ、落ち着いてやっちゃって」
リティナが俺の緊張を少し和らげてくれる。彼女らの斥候隊は役割柄で弓の名手が多いということで、サウナ砲とレーザー砲の砲手をまかされている。
リティナも俺の代手として、俺の班にいる。
そうして、敵が射程内に入り込み俺は戦いの開始を告げる一閃を放つ。
「うぐっ」
「あ”あ”あ」
俺がトリガーを引けば敵の女達は次々に撃ち落とされていく。
しかも、嫌らしいかな俺は彼女たちを殺すのではなく、傷を負わせて戦線離脱させるためにピンポイントで翼を狙っていく。
「はい、30人撃墜」
一方の天羽族は、どこからともなく攻撃されたことにより、混乱しているようで統率に乱れが生じる。
この勢いに乗じて、さらに撃墜しようと敵の女に狙いを定めてレーザーを撃つ。
この時、俺はもう次の標的に意識が向く。そして、撃った閃光は敵の翼を貫くはずだった……
それは突然、上空の彼方から流星の如く飛来して貫かれる運命だった敵の女を救う。
その翼は今までの天羽族の奴らと違い、右翼は鮮やかな翡翠色をし、左翼は真っ赤な血のような紅色をした女戦士であった。
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