第19話 発電と明後日

 俺はハッと気付き、目を開ける。すでに周りは明るく一晩中気絶していたようだ。


それに、真っ裸だった俺には彼女らが着ているのと同じ服が着せられていた。


「おーい、もうちょっと上にあげてくれるか」


「これぐらいか?」


工兵の彼女らはもうすでに作業を開始している。その姿を見て俺は心のモヤモヤを整理する。


まぁ、昨日の気絶後にナニかされたんだろうけど天羽族の侵攻軍は迫ってるし、俺も自分のやれることをやらなくちゃと自分の特異性故の宿命をすんなりと受け入れる。


「おう、起きたかジョースケ。昨日はすごかったな」


と現場組班長のオリグーが俺に気付き声をかけてくる。本当に俺は何をされたのだろうか、と心配になるがそれは置いといて昨日の閃きアイディアをオリグーの伝える。


「うーむ。この石ころを使っていろいろ作れるなら作ってもらえるなら有り難いが、防衛拠点で手一杯で私達は協力できないが大丈夫か?」


「ああ、なんとかやってみるさ」


そう言って、俺はまず石炭をコークスに加工して不純物を取り除く。そうしていると、工房からの第二陣物資が到着する。


その物資に入っていた鉄を俺はコークスを用いて鋼へと製錬する。これにより、燃焼炉の温度にも耐えれるようになった。あとは蒸気タービンに加熱タービン、それに煙突用パーツなどを加工していった。


「日雇いで製造工場の溶接とかしたなぁ…まだできるかな…」

 

故郷でのいろいろと仕事した経験がまさかこんなところで生きるとは思わなかった。と思い返しながら、小規模発電場の必要パーツが揃った。


「よぉーし、後は組み立てるだけけど…これ一人でできるかな」


「お、やってるね、ジョースケ、えらいえらい」


と俺を後ろから褒める声がした。振り返ると周辺の斥候任務を終えたリティナがニコニコと見ていた。


「おかえり〜、リティナ。斥候はどうだったかい?」


「お疲れ様、オリグー。天羽族の奴ら、明後日にはここに来そうだね。どう建築は間に合いそう?」


「あたしらの方はなんとか間に合う目処が立ったけど、ジョースケが追加で建てる防衛設備はけっこうギリギリだね」


「確かに、あの数だとこっちも相当な被害が出そうだしいい判断だと思うよ。もう今日の任務は終わったし、本部の報告は後輩に任してるから私はジョースケを手伝うよ〜」


そう言って、斥候兵のリティナが俺の手伝いをし始める。ボルトやジャッキ操作など簡単なことをしてくれる。それでも人手が足りないのでありがたい。


そして、辺りが夕焼けに染まる頃には発電場が完成する。試運転で異常はなく、コークスを粉砕し、燃焼させる。その熱は加熱タービンを回し、さらに余熱で水を沸騰させて蒸気タービンも回す。


これにより、今までの二倍の電力が確保できる。さらに発電で発生した灰や排ガスは再利用することができる。無駄がないのである。


とりあえず、ひとまずその発電場の電力で大浴場の湯を沸かす。すると、俺の両腕をリティナとオリグーが掴む。


その瞬間、俺は今日も気絶する運命なのかと悟ったのであった。

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