第16話 工房班責任者アリカ
「それでは、まず工房班の皆さんにそれぞれの役割にあった工具と設計図をお渡しします。
A班には材木の加工をお願いします。
B班には加工された材木で建築パーツの量産をしてもらいます。
残ったC班には作ったパーツを立てるために必要な滑車装置や油圧ジャッキなどの建築機械を工作してもらいます。では、始めてください」
各班がそれぞれ作業をし始めると、さっそくC班の何人かが俺の元へ来る。
「C班なのですが、滑車装置はわかるんですが油圧ジャッキって何ですか?」
C班の皆さんは、油圧ジャッキを知らないようである。仕組みは簡単、パスカルの原理をかい摘んで教えると
「すごい、その機械で簡単に物が持ち上げれるんですね! それなら作業が楽になります」
「あたし達、エルフィン族はドファル族ほど力持ちじゃないので、これは便利ですね」
そうでしょ、そうでしょ、俺も初めて知ったときは驚いたよ。そうして、時折、各班からの不明点などを説明したり手伝ったりしながら建築パーツは順調に量産化されていく。
このまま、任せていても大丈夫だろうと俺が一息入れていると、
「ジョースケさん、ちょっといいですか?」
工房班責任者のアリカが俺を尋ねてきた。
「いいけど、どうしたの? 何か問題発生?」
「いえ、そういうわけではないですが…。
実はジョースケさんが助け出した子どもたちの中に私の妹が居て、そのことについてお礼を言いたくて…妹を助けていただいて本当にありがとうございました」
「いやいや、俺はただできることやっただけだよ。でも、感謝されるとなんかこそばゆい感じだね」
俺が少しトボケると、アリカは少し笑い
「では、私は作業に戻りますね。それと現場班からの連絡で建設予定地の整地がもうすぐ終わりそうとのことなので、予定通りに船に建材を載せていきます」
とすぐに班の責任者としてまた働き始めた。
俺も現場班の人達にパーツの組み立てや建築機械の使い方を教えるため、船の搬入作業を手伝っていく。
工兵の子達は力持ちじゃないと言っていたが、俺より全然重い資材を持っていく。この戦いが終わったら筋トレ始めようっかな…。
そうして、俺を乗せた建材パーツの第一陣が川を下っていくのであった。
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