第15話 築城部隊決起会
「はい、注目ー。お前ら工兵の現場指揮を命じられた班長のオリグーだ。
あたし達、現場組はアグルス川を下った平地部に防衛拠点を立てることになった。心して任務に当たるように」
「代わりまして、私は工房班責任者のアリカです。
残りの工房班の皆さんはジョースケさんの工房をお借りして、拠点で組み立てる建築資材の生産に注力してもらいます」
現在行われている決起集会は方針会議後すぐに行われており、開催地はアグルス川の近くに建てていた俺の工房である。そして、この作戦立案者として俺も話せ、とオリグーとアリカから圧を感じる。
「皆さん、初めまして。この作戦の発案者のジョースケです」
俺が話し始めるとその場にいた工兵30人ほどから睨まれる。聞いたことのない作戦に参加させられて心中穏やかでないことは重々承知である。俺もよくわからないうちに発案者になってて逃げることができないし。
「皆様の不満はよくわかります。建築資材を予め作っておいて、それを川に流して大丈夫なのか。その問いに対して、わかりやすくホログラムで説明しましょう」
と俺は腕時計コンピューターでホログラムを投影して、工兵たちにこの作戦と俺の持ってる技術を説明する。
「あんな魔術は見たことない」
「いや、どう見ても魔術の類いじゃないだろ。それにあのジョースケって奴、あたしらを酔わす力があるって噂が…」
「そうそう、それで怪我人を何人も治したって…」
誰も俺の説明を真面目に聞いてくれてない。
「というように運んでいただき、組み立て微調整は現場班にやってもらうという手はずになっております。なにか質問等はございますか?」
「はい、この作戦を成功させた暁には何か特別な報酬がもらえると聞いたのですが、本当でしょうか?」
ん? どこかで聞いたことのある声だなと質問者の顔を見ると、斥候隊にいるはずのリティナがいた。
「報酬は検討中です。というか、何故に斥候隊の人がいらっしゃるのですか?」
「敵方に拠点建設を悟られぬように付近の警護を任されたんです。あと、特別手当として私はジョースケ氏のお風呂とやらに入りたいです」
そのリティナの提案に会場の工兵たちが沸き立ち、フィーバーする。
「噂に聞いたお風呂に私達も入れるの?」
「私もお風呂に入ってみたい!」
「特別手当はお風呂を求めるしかない!!」
この時、初めて会場が一体となって、攻撃隊、防衛隊の垣根を超えて共通の目的が生まれた瞬間であった。
「お風呂! 手当! お風呂! 手当!」
「お風呂! 手当! お風呂! 手当!」
やられたぜ。もし、この場で断れば士気はガタ落ち間違いなしだ。しかし、これを逆手にとれば士気高揚は確定だ。
もちろん、箱を作ることは可能である。しかし、お湯を沸かすためのエネルギーが足りない。勝算は少ししかないが、俺はもう後には引けず…、
「わかりました」
そう答えるしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます