第2章 アグルス河川防衛戦
第14話 口は災い
何日か経った日のこと、俺は拠点長ネルフィアさんに呼ばれてキャンプの軍事方針を決める会議に外部参考人として参加していた。
「攻撃隊としては、また天羽族に奇襲を仕掛けられる前に敵拠点に攻め込むのが得策だと思うのだが」
「いやいや、攻撃隊の方々は性急過ぎますわね。我々、防衛隊としては守りを固めて耐えの一手です」
と、軍議は攻撃隊と防衛隊の女性隊長らの意見が対立しており、なかなか決まらずに時間だけが流れていた。
「攻撃隊から言わせてもらうと、キャンプの防御を固めても敵の攻撃で多くの民間人に被害が出ている。これを続けては、ジリ貧だと思うだが?」
「で、ですが…。かと言って相手方の有利な地で戦ってこちらが被る損失のほうがはるかに大きいと思うですが、それについてはどうお考えですか?」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。偵察部隊からの報告は何かないかね?」
ヒートアップする攻撃・防衛隊の隊長二人を拠点長のネルフィアさんがなだめる。
「はい、偵察部隊リティナの報告です。天羽族は軍団を大規模に編成し始めており、先の奇襲は威力偵察だったと考えられ、後4〜5日で本隊の行軍が開始すると見られます。」
場内から深いため息があちらこちらから聞かれ、拠点長のネルフィアさんも困り顔でどちらの案を採用すればいいのか迷っている。
すると、俺が見ていることに気づいてこちらを見て、何か閃いてニコリと笑う。
「では、ここで外部の者の意見を聞いてみましょう。ジョースケ君、こちらへ。
彼は先の奇襲にて、たった一人で捕虜にされそうだった子供らを救い、戦いのさなか連れ去られるも自力で帰還を果たしたなかなかの人物だ。
では、そんな彼にも意見を求めようではないか」
ネルフィアさんに、急に意見を求められて俺は言葉を詰まらせながらどうにか意見を絞り出す。
「そうです…ね。私の故郷には、墨俣一夜城という話がありまして…」
俺はあの秀吉の一夜城創作話をかい摘んで語った。俺自身、まさか話を振られるとは思ってなかったので、状況的に似ていたこの話がぱっと思いついて出てきた。
「ほぉー、なかなか出来た話ではないか。私はその話に工兵を10人出せるが、防衛隊はいかほど人員を割けれるのかな?」
「20人ほど割きましょうか。確かにこの話通りに防衛拠点を作れたなら、民間人の被害なく来る軍団に対処できますわ」
そうして、ネルフィアさんがパンと手を叩き
「で、では、この方針で異議はないですね。そして、この作戦は立案者としてジョースケ君にも協力していただくことでよろしいですね」
俺はただこういう話があったらしいと言っただけなのに、作戦立案者になってしまったのであった。
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