第13話 鎮痛香
身体を綺麗した後、俺はヒナルに言われた通りに着替えて、救護所に出向く。
「お待ちしておりました、ジョースケさん。さぁさぁこちらへ」
通されたのは負傷者の病室であった。皆、さきの天羽族の奇襲で負傷した者たちである。
「ううぅ…」
「痛い痛いよ…」
それに加え、悲痛な声も聞こえてくる。
「ジョースケさんに来てもらったのはほかでもありません。彼女らの治療に協力してほしいのです」
「俺が…?」
ヒナルは俺に窓際の椅子に座るように指示を出し、理由を説明し始める。
「ジョースケさんの放つ匂いは疲労回復の効果があることはわかっていたのですが、リティナさんの一件から、もしかして鎮痛作用と傷を癒す効果もあるんじゃないかと思ったんです」
「なるほど、試して見る価値はあるな」
「さすが、ジョースケさん。理解が早くて助かります。
それでは、私は患者さん達の容態を見回ってくるのでジョースケさんはそこに座って匂いをこの部屋に充満させてくださいね」
俺はふと、疑問に思う。
「でも、ヒナルはなんで俺の臭いに酔わないの?」
「ああ、理屈は簡単ですよ。自分の周りに風魔術を展開してジョースケさんの匂いを嗅がないようにしてるからですよ」
その答えに俺はその手があったかと感心させられたと、同時になんとも言えない気持ちになった。
俺は言われた通りにしばらくその場で過ごしていると、彼女たちの悲痛な声は次第になくなって静かになる。
皆、痛みが消えたのか頬を赤らめて寝ている。それにしても、本当に俺の臭いで痛みが収まったのは自分でも驚きであり、少し複雑な気分なのだが、結果がオーライなので良しである。
「ふぁー。眠いけど寝たら臭いが出なくなるから寝れない…」
そうして、俺は睡魔と戦いながら傷を負った少女たちに匂いを送り続けるのであった。
◎○▲
一夜明け、俺は半分寝かけながらもなんとか使命を全うした。
「ジョースケさん…そのお疲れ様でした…。おかげで、傷を負っていた患者さん達の炎症がある程度落ちていて、皆の痛みが引いたようです。普通だったら四、五日かかるのにこれはすごいことですよ!」
「でも、彼女たちみんな酩酊してるけどね」
風魔術を展開していない患者の彼女たちは紅潮してぼぉーと俺を見つめている。
「まぁ、一種の副作用みたいなものです…」
ヒナルは頬を少し赤らめながら、そう答えた。
「ハハハ、そっか。じゃあ、また必要になったら呼んでね」
「はい、本当に本当にありがとうございました」
ヒハルは何度も何度も頭を下げて俺に感謝の意を示してくれた。
俺は困ったらお互い様でしょと言って、この後もやることある彼女の邪魔をしてはいけないと早々に救護所を後にして自室で寝るのであった。
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