第12話 治癒師ヒナル

 「身体が熱い、なんだこの胸騒ぎは…お、お前何をした…」


「お大事にー」


と俺はその問いを無視して、すばやく行方をくらまして追手を振り切る。


やはり、俺の血液そのものにも匂いと同じような成分が含まれていてなんとか助かった。


団長の衣服と風上から血の匂いを送り続けていたことにより、遅延性であるものの効果が出た。


それにより、今頃は大多数の部下が酩酊しているはずだ。


だが、いつまた攻めてくるかもしれないので対空対策は必要だと考える。



◎○▲


 そうして、俺は何時間も歩いてなんとかキャンプにたどり着く。


キャンプの様相はあちらこちらに傷を負った者が多く見受けられ、皆が苦悶の表情を浮べている。


(俺がこれ以上近づくと、治療現場が混乱してしまう)


俺は口惜しくもその場から離れようと思ったその時、


カサカサササ


気配を消して何かが忍び寄り、


「ジョースケ! 無事だったのね、良かった良かった。天羽族に連れ去られたって、気が気じゃなかったよ」


「わぉあ! びっくりした。それ心臓に悪いよ…」


とリティナを見ると、彼女は全身ボロボロで切り傷や痣がいくつもあり、見てて痛々しいものであった。


「俺のことより、リティナは自分のことを心配してくれ。その傷、すぐに応急処置をしな…」


「そお…でしゅね…ふあああ…」


かなりの疲労でうっかりして、今の俺はムンムンと臭いがする状態であると忘れていた。


「あは…ジョースケの匂い好きースゥうううう、ハァアアア…」


「俺の臭いってそんなに即効性がやばいのか…」


「…ジョースケの匂いで〜傷の治りも早い〜ウヘヘ…」


「そうなると、俺は全身薬物人間になるからやめて」


と俺の身体から出てる成分怖いと思いながら、人を避けながらリティナを医療救護所へと運ぶ。


「おーーーい、ヒナルちゃーん。怪我人を運んできたんだけど、今、対応できるかな? 」


と救護所から少し離れた場所で呼ぶと、全身と口元を白い布で覆い、感染対策バッチリの女性が出てくる。


「ジョースケさん、ご無事だったんですね。連れ去られたって聞いたときは心配しましたよ」


「ああ、なんとか無事帰ってきた。それより、リティナの怪我の応急処置をお願いできるか」


俺はそう言って、リティナを治癒者のヒナルに預ける。


「あれ、ジョースケさん。リティナさんの身体には目立った外傷は見受けられないんですけど…」


「ま、まさか…そんなはずない。さっき、俺が見たときは全身に痣や切り傷が…」


「もしかして…!」


何かを閃いたヒナルがリティナを救護所へと一旦運んで、再び戻ってくる。


ヒナルは真剣な眼差しで


「ジョースケさん、一度身体を清潔にして、再度救護所へと戻ってきてくれませんか?」


と言い、そして清潔な白い布を渡してきた。


「わ、わかった。すぐ綺麗にしてくる」


俺はそう言って、急いで風呂に入るのであった。

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