第10話 毒のような血
「随分と私達の計画の邪魔をしてくれたな」
と明らかに他の天羽族の奴らとは違うオーラの女が俺をがっちりと動けなくし、俺の両足を掴んで運んでいく。
「俺だけを連れ去って、一体どうするつもりだ。俺を交渉材料に使おうと考えてるならやめたほうが良いぞ」
「子供ならまだしも、お前は私達の妨害をしてくれたからな。それ相応の処遇でもてなそう」
「あまり嬉しくない歓迎会を開いてくれそうだな」
「ちっ…、この状況でよく減らず口を叩けるものだね。城へ連れ帰ったら嫌でも可愛がってやる、二度と口を開けないようにしてやるよ」
まずいな、逃げようにもけっこうな高さを飛んでいるし、エルフィン族のように木に捕まる運動神経もない。
それに強い生命の危機を感じているはずなのに俺の匂いで敵の女が酩酊しない。もしかすると、強い向かい風の影響で匂いが届いてないのか。
早くしないと戻れなくなる…。匂いに変わる代わるもの…、その答えを宙吊りで血が頭に登ってクラクラしながら考える。
だが、その状況が閃きを叩き起こし、
匂いがいけるのなら、自分の血もいけるのではないかと狂った考えにたどり着く。
(迷っってる暇はない)
俺は躊躇なく親指に噛みつき、血を吹き出させる。
それを口に含んで、勢いよく口から敵の女へ吐き捨てる。
「ペッ!」
「はぁ?」
と自分の頬についた血を見て、すぐにそれを俺が出したものと理解して、
「いい加減、少し躾をしないといけないようね」
そう言って魔術を呟き、黒い球体を何度もぶつけてくる。
まるで、ハンマーを身体にそのまま振り下ろされたような激痛が走る。だが、俺は歯を食いしばりながら耐えて、その時を待つ。
彼女の異変はすぐに起きた。
「な、なんだ。身体が熱い。頭が変だ、お前、いったい何をし…」
と敵の女は顔を紅潮させて、フラフラと高度を落としていく。
どうやら、作戦はうまくいったようだ。だが、この速度で地面にぶつかりそうになるとは考えてなかった。
どんどん地面が近くなっていく。回避の一手はないかと思ったとき。
ポケットに小瓶の感触を感じる。その時、ハッと思いつく。すぐに植物エキスの小瓶と薬品を手に持ち、落下の一歩寸前で投げる。
ジュワジュワジュワジュワ
と音を立ててスポンジが生成されたと同時に俺は酩酊した敵の女を庇いながら、それに激突した。
クッションで衝撃を少しは和らげたものの、少し頭がクラクラする。
「な、なぜ、私を庇った…」
俺の横で倒れていた敵の女は必死に欲望に抗いながら、俺を睨みつけながら聞いてくる。
「こうする為だよ」
俺はそう言いながら、敵の女の持っていた剣を抜き取り、今度は俺が彼女を人質にとる。
そうしていると、すぐに敵の仲間が集まってくる。
「団長! ご大丈夫ですか!」
「団長に早く応急処置を!」
どうやら、敵の女は部下に慕われているようで、近くにいた敵の部下たち全員に俺は声を上げる。
「お前ら、団長の命が惜しかったら大人しくこの場を離れろ」
このような非道な手段が効果的に効く。
「クソが調子に乗りやがって…」
「ど、どうするよ…」
敵の部下たちは選択を迫られるのであった。
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