第8話 寝床と水蒸風呂
リティナに男だということがバレてしまったが、俺が想定していた深刻な反応にはならず、軽く流される。
本人曰く、
「他の動物には雌雄があるから、人にもそういう存在がいたらなって感じのおとぎ話はあるんだ。だから、本当だったんだって驚きはあるよ。でも、それ以上に私はジョースケの文明のほうが…」
俺はおとぎ話レベルの存在なのにこの扱いの雑さ…。それほど、未知の世界の文明は人を惹きつけるのか。
「それにこのことを黙っておくと、後々面倒なことになると私は思うよ。
それに、エルフィン族はずっと運命共同体として生きてきたから。隠し事は嫌う傾向があるね、だからこそ自分をさらけ出して真の仲間になるべきだと思うよ」
「リティナにすぐバレたし、遅かれ早かれいろいろとバレそうだったかもな」
「そうかもね、私も弁明に付き合うからさ。早く帰って嫌なこと終わらせて、未知のものを作ろう作ろう」
俺はキャンプへと帰った後、
ネルフィアさんにこのことを伝えた。すると、彼女も
「ああ、やっぱり君は人の雄で特別だったんだね。正直に話してくれてありがとう。まぁ、みんな驚くと思うけど、受け入れてくれるはずだよ」
「黙っててすみませんでした」
「謝らなくていいよ。君なりに考えた末に黙っていたんだろうし、でも、話してくれて私は嬉しく思うよ」
そうして、俺はキャンプの皆に真実を話してなんとか受け入れてもらった。
あと、自分の作業工房がほしいとネルフィアさんにお願いしたところ。キャンプから少し離れた場所なら使っても大丈夫だとお墨付きをもらった。
俺は良い立地場所でポッドの残骸を解体し、再び使えるようにリサイクルして工具を揃える。
それと現地の資材を駆使しながら、工作機械、溶鉱から加工・溶接までを行う金属加工場、それらの動力源は近くを流れる河川に水車型の発電タービンを設置してまかなう。
まずは、簡易的なベッドに適した丁度いい反発性の素材を作る。
「今、何を作ってるんですか? 」
と、リティナが後ろから不意に声をかけてくる。
「わぁ! 近くにいるなら声かけてよ、びっくりした」
「ご、ごめんなさい。つい、いつものクセで気配を消してた。それで、今は何をしてるの?」
「ああ、ここら一帯の植物から搾り取った液でスポンジっていうものを今から作るところ。とりあえず、危ないから離れてて。」
抽出した植物エキスにラボで調合した薬液を投入すると、ジュワジュワと音を立てて、体積が10倍ほど膨れ上がる。
「えぇぇぇ、すごいすごい! 魔術を使ってないのに、どうしてこんなことできたの!?」
あとは、そのスポンジを整形してシーツを被せれたら、簡易ベッドが完成する。
「こ、これすごい気持ちいい。いつも使ってるのよりずっと柔らかい…」
「それ一応、俺の寝床だからね? 」
「ふふふ…」
(か、返してくれるよね)
なんだか、返還されそうにないのでポケットに薬品とエキスを収納して、次の作業に移る。
次は、やっぱりお風呂場だよね。
「今はすぐできそうな簡単な
風呂とサウナを作るか」
「次は、お風呂とサウナ作るの? 」
「そうだよ」
「水浴びじゃ駄目なの? それにお湯を沸かすとなると、毎回木が必要になるんじゃ」
「まぁ、見てなって。」
そう言って、俺はすぐ取り掛かる。
浴槽は近くの一本の樹木を利用する、それの残った材木で一人用サウス室も作った。
露天風呂にサウナもおまけ。あとは、水を沸かす装置を設置すれば極楽じゃんと期待に胸を踊らせる。
「お湯は電気で沸かします」
「デンキ?」
脱出ポッドの残骸から冷却装置を偶然発見していて、それを修理し改造して冷たい水から温かいお湯へと変換できるようにしたのである。
発生した湯気はサウナ室へと送られる、我ながら無駄がない。
そうして、試運転で作動させるといい湯加減の温水が出てくる。
リティナがそれに軽く触れて、びっくりした表情で
「あったかい! 温かいお湯だよ。すごいよ、これすごいよ。ちょっと、他のみんなも呼んできていい?」
「いいけど、一番風呂はあげないぜ」
リティナも温泉でもないところでこれほどの温水に驚いた様子で興奮気味に他の仲間も呼びにいった。
そうして、俺が最終確認を終えて、いざ入ろうとした時、
ピューーーーーーー!
キャンプの方向から危険を告げる鏑矢が聞こえるのであった。
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