第5話 酩酊
勢いよく部屋の外へと飛び出した俺は一旦その場を離れて、落ち着くため外へと向かうことにする。
(リティナって酔うとあんなふうになるんだ…)
そう思いながら、足早に通路を歩いていると客人に料理を運んでいるエルフィン族の女性が前から歩いてきてすれ違った。
そして、十歩ほど歩いたところで後ろで
ガシャーン
と物が落ちた音がして俺は振り返る。どうやら、先ほどの女性が運んでいた料理を落としたようだ。
「大丈夫ですか、怪我はありませんか?」
と心配になった俺は彼女に駆け寄る。
「えぇ、頭が少しクラクラしますが大丈夫です。」
「少し座っててください、すぐ他の人を呼んできますから」
俺はそう言って、別のエルフィン族の人を呼ぼうとその場を離れようとした時、手をぎゅっと掴まれる。
掴んできた女性の顔はリティナと同じように恍惚とした表情で目が虚ろである。
「すみませんが、あなたから漂ってくる甘い香りをもっと嗅がせてくれませんか?」
女性はそう言って俺を押し倒し、妖艶で眼差しで見てくる。
「え、え、ちょっと何するんですか!」
先ほどのリティナのように再び襲われそうになる。怖いという感情で女性を押しのけ走って逃げる。
咄嗟に振り向けば、女性もまた酩酊した様子でフラフラと追いかけようとする。
俺は走りながら、自分に生体スキャンをかけて体の異常を調べる。
結果:汗腺から未知の物質を含む臭いが多量に放出されています。なお、身体に目立った点は見られないため、代謝によるものだと思われます。
もしや、この臭い匂いのせいでおかしなことが起きているのではと考える。
自分がここに居たらまずいと思い、人を避けながらキャンプの人がいなそうな場所へと避難する。
なんとか、誰にも会わず俺はキャンプの端にあった物置小屋に隠れる。
物陰で俺はこの匂いをすぐに落とすには、どうしたらいいかと模索する。身体を洗えど変わらず、いろいろと試す。
だが、ずっと匂いは放出され続けていた。幸いなことに生体スキャンは時間経過で匂いは減少すると予測を出す。
俺はそれをひとまず信じて、念のため近くにあった大きめの箱の中に身を潜めて眠ることにした。
目が覚めて、安全を確認した後箱から出る。体から出ていた匂いはもうなくなっており、スキャンをしても微量となっていた。
見つからないように外に出てみると、もう農作業や家畜の世話をしている住人が近くにおり、
「あら、あなたここに一体何の用かしら? 見ない顔だね、どの種族の客人なの?」
と、部外者の俺を好奇心から数人の住人たちが詰め寄ってくる。
(この状況で逃げるのはあまりよろしくないなぁ…)
俺は起きて早々、数人の女性たちに囲まれてしまう。
幸いなことに昨晩のような豹変した様子見られない。だが、まだ安心はできないのでこの場を早く脱したかった。
その時、
「あ! ジョースケ!やっと見つけた!」
呼ばれた声の方向を見ると、そこには酩酊していたリティナがいたのであった。
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