第3話 斥候者リティナ

「おい、どうした!」


 天羽族のもう一人も仲間が倒

れた音に気付き、すぐにこちらに来た。そして、俺と倒れている仲間の女を見る。


「よくも…よくもアタイのダチをぉおおおおお!」


激高した敵の女は翼を羽ばたかせ、勢いよくこちらへと飛び掛かってくる。


(今だ!)


パァン!


俺は間髪入れずショックガンを放つ。この距離ならいける!そう確信した…けれども、その見通しは甘かった。


「またその攻撃かい? トロすぎてあくびが出るよ」


「お前らの反応速度あり得ないだろ」


かなり近い距離なのに敵の女は光線を防いだ。俺は連射するが、それらは意味もなく飛び散る。


俺の顔が恐怖に侵されていくたびに、敵の女は一歩づつ近づいてくる。


剣が届く間際まで来られて、どう足掻いても逃げ場は完全に封じられる。敵も詰めたという表情をし、俺も死んだと思った。


だが、絶好のチャンスを今かと待っていたリティナが敵の女の頭上へと飛び込んできた。


「カッ…アッ…」


そして、脳震盪を起こした敵の女はその場に倒れ込んで動かなくなった。


「逃げたと思ってた…」


「奴らの勘はするどいから、少々無理をさせたね。謝るよ」


そう言って、リティナは持っていた血の付いた石を捨てて俺に手を差し伸べる。


俺はその手を掴んでなんとか立ち上がるのであった。




◎○▲



リティナは指をさして教える。


「ここが私らエルフィン族のキャンプだよ」


ようやっと、俺らは安全地帯のキャンプへと到着し、先に戦った天羽族の二人は捕虜として担いできた。


彼女らの今後は天羽族との交渉材料にされるらしい。


(キャンプっていうより巨大ツリーハウスだな…)


そんな印象を抱きながら、ツリーキャンプを登っていく。


帰ってきたリティナが連れてきた物珍しい顔の俺を小さな子供や大人の住人が興味津々な様子で伺う。


逆に俺もここの住人たちをキョロキョロと見ていく。出会う人すべてけっこう美形な女性らしき人達。


良い村だなと思いつつ、次第に違和感を感じ始める。


「このキャンプに男の人とかいないのか? 」


俺はリティナに質問したが帰ってきた答えは


「え? 男? なにそれ聞いたことのない言葉だな」


まさかの男を知らないという解答だった。だが、現に小さい幼女の姿や妊婦の姿を何人か見てきたし…まさか!


「変なこと聞くけど、木の実から生まれてきた?」


「何を言ってるの? 人族はみんな腹から生まれるに決まってるでしょ」


「てこと、天羽族も?」


「…うん。もしかして、私が使った魔法で少し記憶喪失なの? ほかにも異常があるかもしれない、ちょっと触るよ」


リティナはそう言って、心配そうに俺の身体の異常を調べようと近づいてくる。


「そ、そうだよな。ハハハ、笑えない冗談だった。すまない、ご心配をおかけしました」


そう俺が言うとリティナは


「おかしな冗談を言うね。少しビックリしたよ」


と俺の触診を中止してくれた。


もしも、俺が女じゃないってことがバレたら異物として排除されるか、見世物として一生を…


絶対に黙っておかなきゃと、俺は心に誓うのであった。

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