第10話

あの日から落ち着きを取り戻した彼女はまず、

仕事を探すことにした。


当分は実家から通って、

余裕が出来たら

一人暮らしを始めようと思っていた。


前のアパートはいつのまにか両親が、

引き払い、引っ越しも済ませていてくれた。

こんなダメな娘の為に、

感謝しても仕切れない。


「これからはたくさん親孝行するぞ!」


と心に決めた。



あれから同期の彼とも連絡は取っておらず

そのままになっていた。


なんとなくスッキリしないので

一度ブロックを解除して


「別れましょう。」


とだけメッセージを入れて

ブロックした。


同期の彼には

全く気持ちがなくなってしまったので

返信は不要だった。



それから求人情報を探し、

何件か面接をした。


休んでいた期間の事を聞かれて

断られた件数が増えて行ったが

通うには少し離れてはいたが、

最初に採用通知を頂けた会社に

入社する事が出来た。


前の会社とは違い、

昔ながらの地元企業

と言った感じの会社だった。


社長をはじめ、社員の方々も皆さん優しく


「良い会社に入れたなぁ」


としみじみ思った。



元彼との約束の


「見返せるくらいのいい女」


になる為の努力も、

お金が掛からない程度に

しっかりと続けていた。


それからの日々はあっと言う間に過ぎていった。


毎日色んな発見があり

充実したものとなった。


元彼とも定期的に連絡を取っていた。

決して復縁を狙ったものではなく、

こんな日々を過ごしている。

と言った簡単ものだ。


両親とも

給料が入るたびに

ご飯に行ったり


休みが取れれば

旅行に連れていったりと

恩返ししているつもりだ。


また一人暮らしをすることも

できるようになった。



それから一年位過ぎた頃に、

元彼から


「彼女が出来たんだ!」


と連絡が来た。


いつかそんな日が来るとは思っていたが

辛かった。

少しだけ泣いた。


それでも心から


「おめでとう!」

「今度こそ幸せになってね!」


と返す事が出来た。


「次は君の番だよ!」


と言われて


「わたしにそんな資格あるのかなぁ」


なんて思っていたら


「今年中の宿題です!笑」


なんてメッセージが届いた。


思わず笑ってしまった。


「前を向いて生きて行くって決めたんだ」


と思い返し


「頑張ります!」


と返信をした。



それから数ヶ月が経ち

彼女にも気になる人が現れた。


会社に営業で来る

彼女と同じくらいの歳の青年だ。


顔や体型などは決して良いとは言えない。


最初は気になりもしなかったが、

一生懸命に働いている姿や

営業に来るたびに、

みんなに元気に挨拶をし

その場を明るくしてくれる人だった。


礼儀正しい人でもあり

年齢に関係なく敬語で話したりしていた。


何事にも前向きな姿が、

ちょっとだけ元彼とも似ていた。


その青年が来るたびに

楽しみが増して行った。


意を決してご飯に誘ってみた。


すると、快くOKをもらえた。


徐々に会う機会が増えていき

その青年から告白してくれた。


「よろしくお願いします!」


と喜んで返事を返した。


元々気になってはいてくれたみたいで


「こんな美人な人居るんだ。」


って思っていてくれたらしい。


「僕なんかとは別の世界の人なんだ。

だから、話せただけで幸せだ。」


とも思っていたらしい。


ご飯に誘った事がきっかけで青年は


「彼女に振り向いてもらう為に

頑張って努力しよう。」


と決めて頑張った甲斐があったと

喜んでくれた。


「これで少しは

元彼も元同期の彼も見返せたかな」


と心にの中で思えた。



元彼に連絡を取った。


「彼氏が出来ました。

あなたのお陰で

また幸せになるチャンスを貰えました。

今度こそ幸せになってみせます!

本当にありがとうございました!」


とメッセージを送った。


「これで宿題終わったね!

君なら出来るってわかってたよ!

本当におめでとう!

今の君なら絶対幸せになれるよ!

今度はどっちが幸せか勝負だね!笑」


と返信が来た。


自然と笑顔になった。


その後は、元カレに連絡するのを辞め

最後に連絡するのは

結婚が決まった時にしようと思った。


新しい彼には、

過去の出来事を包み隠さず伝えた。

それでも受け入れてくれた。


嬉しかった。



それから充実した日々を送り

遂にその日が来た。


「結婚して下さい。」


プロポーズされたのだ。


いつも泣いてばかりだったけど

今日は涙は最高の嬉し涙だ。


「不束者ですが、よろしくお願い致します。」


そう言って

二人で抱き締めあった。


「これで両親にも少しは親孝行出来たかな」


そして

左手の薬指に指輪を嵌めて貰らい

その指輪を眺めて


「二人で幸せになろうね」


と呟いたのだった。



こうして

指輪から始まった物語が

別な形の指輪になって返って来た。


因果応報もあったけど

最後は幸せになった

彼女のアフターストーリーでした。





次が最終章の同期の男編になりますので

よろしくお願いいたします。

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結婚を考えていたけど…後日談 彼女編 ya_ne @ya_ne

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