第13話 召喚獣
「お前は…さっき助けてくれた!」俺はヒーローの再登場に歓喜の声を上げる。
「キャノアルクトス!?どうして大森林なんかに……そもそも、とうの昔に半島から姿を消したはずでは!?」
キャノアルクトス。身体の様々な部分から魔力を大砲のように打ち出すという特徴から付いた別名は、"戦車熊"。
初対面の時は記憶が戻っていなかったので分からなかったが、今の俺の脳内にはコイツに関する情報がキチンと刻まれている。
ユーバックが言った通り、この魔獣は現在野生での生息が確認されていない。
タダでさえ生息数が少なかったのに加え、その強さゆえ様々な国により乱獲、軍事利用されたことによりこの世から姿を消してしまった悲劇の魔獣、それがキャノアルクトスだ。
この剣と魔法の世界に"戦車"というワードは場違いな感じがするが、コレにはキチンと由来がある。
400年ほど昔、カウディア半島に小国が乱立し戦争が絶えなかった時代に活躍した英雄、ジェイズ・サザーランド。彼は自身が魔術で作り出した極小サイズの鉄製要塞を"戦車"と呼び、ソレに乗って戦場を暴れまわったという。
キャノアルクトスの二つ名はここから来ているのだ。
……多分この英雄さんは俺と同じ、現実世界からの転生者だと思う。400年前のこの世界に戦車という存在はオーバーテクノロジーが過ぎるからな。恐らく、前世の知識を使って異世界無双を楽しんでいたのだろう。
「アリアネちゃん!!」フィーラが心配そうにこちらへ駆け寄ってくる。「…もう間に合わないかと思ったけど……本当に良かった……」彼女はへたり込む俺を優しくギュッと抱き寄せた。
……天使か?
俺は安心感から彼女の背に思わず両手を回す。
俺の前世はアラフォーのオッサンだが、今は
故にセーフ。決して犯罪ではない、コレは"愛"だ。OK?
「でも、どうしてあのクマさんはアリアネちゃんを助けてくれたんだろう?何か心当たりある?」
「……もしかして」
心当たりはある。
キャノアルクトスが最初に俺の前へ現れたのは、<クマ出没注意>を出したすぐ後。
ただ、<クマ出没注意>の標識が出たとき俺はまだ"道路標識魔術"の使用回数が少なかった。
ゆえにその効果が『近くに熊が居ることを教えてくれる』というちんけなモノだと認識してしまっていたが……。
<踏切あり>の効果が"電車の具現化"だったことなどを考えると、<クマ出没注意>の本当の効果は"クマの具現化"……正確に言うと『熊型魔獣の召喚』だったってことか!
うん!マジで何でもありだなこの魔術!
俺のことをサーブルベアやラトネボアアジャラから守ってくれたのは、こいつが俺の召喚獣だったからというわけね。
数多いる熊型魔獣の中からなぜコイツがピックアップされたのかは分からないが、まあ細けえこたあ良い!すでに絶滅した激つよ魔獣が仲間になったんだからな!!
頼もしい俺の召喚獣は、強く殴られた衝撃で朦朧としている大蛇の顔面目掛けて再び跳躍した。
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