第14話 魔力切れ

次話辺りで場面を移し、やっと話を動かしていきます。

あと1話ほど退屈な序盤が続きますが、お付き合い頂けると幸いです。

――――――――――――――――――――――――

大蛇の顔面に跳躍したキャノアルクトスは再び殴打を浴びせる。殴られたことにより「ドゴッ!!」と鈍い打撃音を響かせたあと、大蛇は後方に倒れ伏した。

 熊は間髪入れずに大蛇の上に乗っかり一方的に攻撃を加え続けた。時折、大蛇が反撃を加えようと身をよじったりしていたがソレも実らず、時間が経つにつれ徐々に動かなくなっていった。


 熊さんによる弱い者いじめの様子を眺めながら、俺は3人に事情を説明した。

 事情とはもちろんキャノアルクトスについてだ。


「……つまり、このキャノアルクトスはお前の召喚獣だと?」俺の説明を聞いたジャッジは口を開いた。

「ああ、そう考えると色々と辻褄が合うんだ」

「確かに召喚魔術であれば"絶滅種"はもちろん、"上位存在"…つまり普段はこの世に実体を持たない高位の存在を呼び出すことは可能だが……」

 

 ジャッジは、大蛇をボコボコにしている俺の召喚獣をしばし見つめたあと「魔術に目覚めて間もない人間がコレほどの魔獣を召喚した、などという話は聞いたことがないんだがな」と呟いた。


「そう考えたらファンデンベルク家って節穴さんの集まりじゃない?こんなに凄いアリアネちゃんを、役立たず!って追い出しちゃうなんて」

「ソコが解せないところなんです。ファンデンベルク家ほどの名家ともなれば、優秀な魔術適性検査師を雇っているはず。普通はこんな間違い起こりようがないと思うんですが……」


 確かに現地人からすると不可解だよな…。

 転移、転生、召喚。いずれの場合でも異世界にやって来た人間は「神様からの贈り物」にせよ、「偶然が重なった末の幸運」にせよ、得てして何かしら優秀な能力を持っているのがテンプレだ。身も蓋もないことを言い方をすれば、"転生モノはそーゆーもん"の一言で済んでしまうわけだが……ソレを説明するわけにもいかんしなあ。

 

「まあ、今そこを考えても結論は出んだろう」ジャッジは森林の奥の方へ振り返ると「……お前らはアリアネと共にアルステイラへ帰還しろ、フィリップを回収したのち私も続く。アイツが言っていた"想定外のこと"を確認したいからな」と言って走り去ってしまった。


「は~い!さあアリアネちゃん、一緒に帰りましょ!」フィーラは俺の手をとった。

「ああ……ってアレ…?」


 俺は立ち上がろうとしたが、何故か足に力が入らない。

 そのことに気づいた瞬間、まるで貧血症状のような視界のぼやけと倦怠感が生じる。 


「どうしたの?アリアネちゃん……って、ちょっと!魔力がすっからかんじゃない!!」


 ……魔力がすっからかん?

 ああそういえば、アリアネが読んでた魔術書にそんなことが書いてあった気がする…

 しかし今頃記憶を探っても遅かったようで、俺は"魔力切れ"によりゆっくりと意識を手放していくのだった。

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