後輩登場(ここから場面転換や会話が入るので書き方注意)

●回想(後輩について)

 それではまず、彼との出会いを振り返ろう。

 彼の関係者となったことで、私はただのモブではいられなくなった。

 けれども世間知らずな私はしばらくそのことに気付かなかった。

 馬鹿だよな、私。

 けど普通疑うか? だって彼、ただの委員会の後輩だぜ?

 ……その油断と余裕が現状を招いたし、前世で殴殺されたのだって自分が余裕ぶっこいていたせいだった。

 死んでも反省しない自分のこの性分は、きっと何回生まれ変わったって変わらないのだろう。

 ……まあいい、とにかくあの時のことを思い出そう。

 あれは、去年の六月、この街がとんでもない豪雨に襲われたとある平日のことだった。



 「ん?」

 後輩? 誰のことだ?

 委員会の後輩っていっても、この子は委員会になんて入ってない。

 というか去年だとまだ一年生だし、後輩なんているわけがない、そもそも去年だって委員会には入っていなかった。

 ひょっとしてこれ小学生時代の話だったりするのか?

 ……いや、落ち着け俺、別にこの子や俺やその他がモデルになっているとはいっても、全くその通りになっているとは限らない。

 だからここから先の展開によっては、名前やちょっとした特徴を周囲の人間から少しだけ借りただけの全く別人の話になる可能性だってあり得るのだ。

 というかそっちの方があり得るかもしれない、と思いつつ先に進む。


●場面転換、図書室

 図書室のカウンターに主人公が一人、窓の外は豪雨(いい素材を探す)。

 図書室には主人公以外の人間はいない。

 BGMは雨音(やや雷の音も含む)を探す。


以下セリフ(主人公は「主」、後輩は「後」、その他登場人物は登場時に補足)

 主:今日も一人で当番か

 主:別にいいけど、誰も来ないし

 主:というか轟木君って一回も見たことないけど、不登校かなんかなのかね?

 主:不登校にしろなんにせよ、サボるような奴を当番制のある委員会に割り当てるなっての

 主:おかげで全部しわ寄せがこっちにくる

 主:まあいいか、一人の方が気が楽だし


 図書室のドアが開き、後輩が入ってくる。

 後輩、カウンター前まで歩いてきて、主人公に向き合う。


 後:なあ、今日の当番ってあんた?

 主:はい、なんでしょうか?

 主:(うわ、美少年だ)

 主:(本の返却か? それとも何か探している? まあいい、たとえ相手がどれだけどちゃくそタイプな顔の美少年だろうと私は図書委員)

 主:(冷静かつ的確にこなしてみせましょうかね)

 後:ふーん、じゃよろしく


 後輩、カウンター内に入ってきて主人公の隣に。


 主:え、いや誰です???

 後:今日のもう一人の当番だけど? 雨すげぇからたまにはオシゴトしようかなって

 主:は? 今日の当番って……轟木君、です?

 後:そだよ

 主:は、はあ……そですか……

 主:(たまにはじゃなくて毎回来いよ、ってかこの口ぶりだと雨が凄すぎて帰れないから気まぐれに来た、って感じか?)

 主:(不登校児とかじゃなくてただのサボりだったってわけね。まあいい、やることももうほとんどないし……放置でいいか、仕事教えてもこれきりだろうし)

 主:(というわけで、放置)

 主:(というか顔が好みすぎて会話が続くと確実にボロが出るので、沈黙を貫こう。にしてもガチで可愛いな、夜出歩いたら確実に襲われるかわいさだ)

 主:……

 後:……

 主:…………

 後:…………なんかねぇの?

 主:……返却ボックスの返却作業も終わりましたし、本の整理も大体終わってますし、ご覧の通り閑古鳥が鳴いてるので特には

 主:(なんもないんだよ。おしゃべりすると何言い出すか分からないから黙ってておくれ)

 後:そう

 主:……

 後:……なんで今までサボってたんだとか、そういうお叱りは?

 主:会話が成立しなさそうなタイプに説教しても無駄だと判断しているので、別に何も。というか普通に学校来れる感じの人だと思ってなかったので少し驚いてます

 主:(よし、いけてるいけてる問題ない。顔もにやけてないし厳格で気難しい面倒な先輩を演じられてる)

 主:(下手にフレンドリーにしてお話続くと絶対に恥をかく、それなら気難しい奴演じて嫌な奴認定された方がまだマシ……!!)

 主:(変で気持ち悪い先輩認定だけは、避けねば――!!)

 主:(こんな可愛いの塊に変態を見る目で見られたら確実に死にたくなるから、頑張れ私、負けるな私)

 後:は?

 主:当番の日にもきませんし、集まりにも一回もきたことがなかったので普通に不登校児か何かだと思ってたんですよ

 後:えー……センパイ俺のこと知らねーの?

 主:下級生で一度も顔を合わせたことない人のことなんて、名前だけしか知りませんよ。あとわかってるのはサボり魔ってことだけです

 後:……あはは。センパイ、あんたおもしれーね

 主:はあ……? 面白い要素なんかありました?

 主:(何故!! 今!! 笑う!!? そんな要素一個もなかっただろうが、やめろ笑うな子犬ちゃんじゃん!!)

 主:(堪えろ私……!! 顔を、顔を無で固定するんだ緩むな待て頼む持ってくれ私の表情筋……!!)


●暗転

 この時、彼が笑った理由を深く突っ込んでいれば何かが変わっただろう。

 だけど当時の私にとってはどうでもよかったので、ただ「変わった後輩だな」としか思わなかった。

 その後は特に会話も続かず、というか続かせずに無事に閉館時間まで乗り切った。

 だけど多分確実に嫌われただろうからもう二度と来ないだろうと安心しきっていた私は翌週、にこにこ笑顔でやってきた彼の顔を見て絶句することになるのであった。



 「…………」

 細かいところは全然違うが、去年こんな感じのやりとりを確かにこの子とした覚えがある。

 その時のやりとりは俺とこの子しか知らないし、俺は誰にもこの時の話をしていない。

 この子も誰かに話したりはしないだろうから、やっぱりこれはこの子が書いたものなのだろう。

 今のところ主人公がこの子で後輩が俺であるらしい。

 現実では俺もこの子も図書委員ではないし、そもそも同級生だ。

 あと俺がサボってたのは日直だったし、こんな感じの会話をしたのは二回目の日直の時のことだったはずだ。

 あとこの頃の俺は学校サボりがちだったけどある程度登校してたのでこの会話の時が初対面ではない、会話したのはこの時が初めてだったけど。

 「というか心の声……お前あの時こんなこと考えてたの……?」

 けど、いつだったかボロ出して変態扱いされるくらいなら嫌な奴扱いされた方がまだマシだった、って自供してたっけ。

 めっちゃ可愛い連呼されててとても戸惑っている。

 俺って可愛いの……?

 全然嬉しくない。

 メモアプリをざっくりと確認すると、ずっとこんな調子でゲームシナリオが延々と続いているようだ。

 タイトルをざっと確認してみると『キャラ設定(見た目)』とか『ゲームシステム(大雑把)』とかの設定っぽいものから『道路、孔雀出没』とかいう意味不明なものまである。

 孔雀って何??? 道路に孔雀が出没するとかいう珍事件あったっけ??

 というかゲームシステムってなんだろうか、今のところはただのノベルゲームっぽいけどバトルとかあるんだろうか?

 あの子にはそういう荒事は一切関わらせるつもりはないけど、俺のせいでひょっとして何かあった?

 ざっと全身から血の気が引いたのがわかった、ほとんど反射的に『ゲームシステム(大雑把)』を開く。


●ゲームシステム(大雑把)

 主人公が後輩から『失われる』ことになる元凶を探る。

 探索していろんなところを調べると箱(ヒント)を入手できる。

 メニューから『箱を開ける』で手に入れた箱でどうやって『失われる』のか推測を開始する(それぞれにスチル付けたいが流石に無理か)。

 箱は所謂バッドエンド、主人公が死んだり後輩と別れるなどなんらかの理由で後輩の前から主人公が消える予測になっているが、全て主人公の妄想。

 箱を集めるごとに悪い妄想をしていることになるので、メニューに主人公の絵とか載せるなら箱を集めるごとに顔色悪たり目を血走らせたりして追い詰められてる感を演出(余裕があれば実装)。

 全ての箱を集めた後の選択肢でエンディングが変わる。

 ※箱の例→ 乗物柄の箱(入手場所は駅、開くと主人公が事故死するという推測が始まる)。



 まず目に入った文字列を見て、思わずホッとした。

 「探索ゲー、ってやつか……?」

 バトル要素がなくて多少はほっとする一方で危ない橋を渡っているんじゃないだろうかと別の不安要素が出てきた。

 というかなんだこれ、バッドエンドの妄想集めるゲームって面白いのか……?

 それにわざわざスチル付けたがってるみたいだけど、別れるのならともかく死ぬなら下手したらグロじゃん……あれ、これってひょっとしてグロゲー?

 なんで自分達をモデルにグロゲー作ろうとしてるんだよと問い詰めたくて仕方がないが、まだ目を覚さない。

 仕方がないので先を読み進めてみることにする。

 というかなんで俺の前からお前がいなくなる前提のゲームなの?

 意味わからん。

 とりあえず起きたら説教だから覚悟しろ。

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シミュレーション・ゲーム 朝霧 @asagiri

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