紙に書かれた内容について

ただの仕事仲間です。

彼が吸っていた煙草はひどく臭く好きじゃないです。

彼が川沿いで見つけた彼岸花は私は好きじゃないです。

彼の書く話は好きでした。

彼の見通す目が嫌いでした。

彼の自分勝手なところが嫌いでした。

遊園地は趣味ではありません。

彼の笑顔は気味が悪いものでした。

私は泣いたことがありません。

泣いている自分を許すことができないのです。

彼は痩せていました。

彼はもの好きでした。

花瓶にはいつも彼岸花が置いてありました。

私はその彼岸花が苦手でした。


件名 来栖先生に関して

From 松岡裕子

一斉配信

今回の件につきましては皆さん深い心の傷を負っていると思います。私もその1人です。来栖さんとは何回か仕事でお会いしたことがあります。それだけでも印象に残る方でした。彼の書く話は全て繊細でどこか弱々しいものでした。

そんな彼を失ってしまったことは大変悲しいことです。彼は21世紀の歴史に残る作家の1人でしょう。お悔やみを申し上げます。



彼はレコードが好きでした。

私はレコードが好きでした。

老後はレコードショップを経営したいです。

私は彼の作品を見ていたかったです。

私が抱いた感情は結局なんだったのでしょうか。

辞職届は受理されました。

私はひどくメランコリックなのでしょう。

私はそれでも泣けませんでした。

私は彼岸花を買いました。

私は——



許せませんでした。ごめんなさい。

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メランコリックに生かせてよ 睡眠欲求 @suiminyokkyu

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