第2話 幼き恋人を救うため
「ここだよ」
裕星が毎年子供の頃から行っていた神社だが、とても古く
「わぁ、とってもステキ! 赤い
美羽はしばらく鳥居の前で
赤い鳥居の向こうにもうひとつ普通の木造の鳥居があって、その奥に神社の
ここは正月にはきっとたくさんの
ふと背後の参道に目をやると、古い
わぁ、可愛い……美羽は裕星が来るまでの間お参りしようとして、ポケットから小銭を出すと、小さなお地蔵様の前に置かれた皿の上にチャリンと乗せて手を合わせた。
お地蔵様の丸い顔がとても穏やかで、まるで小さな子供のようだな、と美羽がニッコリ
美羽は一瞬めまいを感じて後ろに倒れそうになり、慌てて両手を付こうとしたがなぜか地面がない。
後ろに回した両手はバタバタと
その頃、駐車場から鳥居に戻ってきた裕星は、美羽の姿が見えないことに気づき、辺りを捜して歩き回っていた。美羽が裕星を置いたまま勝手にどこかに行ってしまうことは考えにくかった。美羽の身に何か起きたことは間違いない。
そのとき、「……裕、くん」と美羽の声が
美羽が次に気が付いたのは、誰かに
美羽がハッとして見上げると、声の主が心配そうに美羽を見ている。その顔はどこかで見たような……まるで教会のシスター伊藤をそのまま10年若返らせたような顔立ちの30代半ばくらいの女性だった。確かに、女性は修道女の着る黒いトゥニカと、頭には白いウィンブルを被っており、まさに本物のシスターなのだろうと思った。
「は、はい、大丈夫です。ありがとうございます。ちょっとめまいがして……」
美羽が立ち上がろうとしてフラつきそうになった時、女性はさっと美羽に手を差し伸べ立たせてくれた。
美羽が無事なのを確かめると、「神のご
女性はビックリしたように振り返って美羽を見たが、「どこかでお会いしたことがありましたか?」と答えた。
美羽はもう一度女性の顔を確かめたが、やはり女性は明らかにシスター伊藤よりも若かった。
「まさか、よね……」と美羽は
美羽は辺りを見回してみたが、さっきまで数名はいた参拝客の姿は全く見あたらなかった。
それどころか、周りの高層ビルに目をやり、信じられないほどの衝撃を受けた。
「あれって、もしかして……、まさかスカイツリー?」
美羽が見たのは、まだ
美羽は
さっきの古い
「あのぉ……」
シスターの心配そうな声で我に返った美羽が、「あ、すみません! 似ている方を知っていたので、
シスターは少しも笑うことなく心配したように、「ここは
それを聞いた美羽は、さっきまでいた場所であることを知り、更にパニックを起こした。
「で、でも、周りの建物が少し違って見えるのですが……いったい今日はどうしたのかしら……」
「今日? 今日は2009年9月22日ですよ」
シスターは13年前の日付を
それとこの周りの異様な様子。まるで本当にタイムスリップしてしまったかのようだった。
美羽は若いシスターに丁寧に礼を言って別れ、周辺を
(きっと思い過ごしだ。どこか知らない道に迷い込んだに違いないわ。早く裕くんに会わなくちゃ、きっと心配してるはず)そう考えながら美羽はスマホを出そうとポケットを探った。
スマホを取り出し電話を掛けようとしたが、
まさか、いくらなんでも都内の真ん中が圏外のはずがない。故障なのかしら……。
ふと周りの人達を見ながら気が付いた。携帯電話を掛けている人もちらほら見かけるが、ガラケーと呼ばれている二つ折りの携帯を持っている人が多いのだ。それに今ではあまり見かけなくなった緑の公衆電話のボックスが2台も立ち並んでいる。
美羽がその不思議な光景に
美羽が、すみませんと謝ろうとしたその時、「お母さん、待って! 行かないで!」と泣きじゃくりながら小学生くらいの子供が女性を追いかけてマンションから出てきた。
お母さんと呼ばれた女性はちらりと子供を振り返ったが、「もうすぐ家政婦の金田が来るからお部屋で待っていなさい」と言い捨てたまま、前の道路に停めてあった運転手付きの高級車に乗り込んで風のように去っていってしまったのだった。
幼いその子供は10歳になるかならないかくらいの少年だった。
まだ涙を溜め唇を噛んで立ち
一部始終を見ていた美羽は、
少年は、涙を
「待って!キミのお家はここなの?さっきの人はお母さん?」
美羽はその少年がどうしても気になってしまった。
美羽は、構わずエントランスにキーを差して中に入って行こうとしている少年の腕をつい掴んでしまった。怖い顔で振り向く少年の顔をしばらく見ていた美羽が思わず口を開いた。
もしかして、もしかして……。「あなたは、裕……くんなの?」
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