花火

 

 

 オレたちは、花火をみに来てたんだけど…

 出店のあたりは、とにかく人がすごい。

 

「これじゃ迷子になっちゃうね」

 と、由奈子が言った。

 …たしかに。

 

 なので、オレは由奈子の手をぎゅーっと握

 りなおした。

 

 この手を離したくない。

 離すもんか。

 

 オレは…

 由奈子を救ってあげたい。

 このどこか壊れてしまいそうな由奈子を守

 りたい。

 そう思った。

 

 

 由奈子から伝わる体温…

 あったかい。

 

 オレたちは、出店でかき氷とたこ焼きを買

 い人混みから少し離れたところから花火を

 みることにした。

 

 

 暑い日に食べるかき氷は、最高だ。

 少し頭がキーンってするけど。

 

 それからしばらくすると花火が始まった。

 

 ドドーン。

 パラパラパラパラ

 

 おぉ、やっぱり花火って迫力満点で綺麗だ

 なー。

 

 なんて空に打ち上がる花火を見上げた。

 

 

 由奈子もただひたすらに花火をみていた。

 

 

 すると由奈子が、

「きれい…久しぶりに見たなー…花火ってや

 っぱりきれいだよね」

 と言いながら涙を浮かべた。

 

 …由奈子。

 

 オレはそんな由奈子をみて思わず由奈子を

 抱きしめた。

 

 そして

「うん。花火、きれいだね」

 と言った。

 すると由奈子がしずかにうなずいた。

 

 

 オレは由奈子のほんとの彼氏じゃない。

 

 でも…

 でもオレは、由奈子を守り続けたい。

 ずっと由奈子のそばで支え続けたいと思っ

 たのだ。

 

 きっと由奈子は、心に何かかなしいものを

 秘めている。

 そう思う。

 

 

 

 

 夏休みが明けて、また学校が始まった。

 

 由奈子は、学校から帰っても別に何もして

 いないと言うことだったのでこのまま二人

 ともバイトを継続して欲しいと叔父さんか

 らの要望もあり、そのままバイトを続ける

 ことにした。

 

 学校での由奈子は、とにかくギャルだ。

「おっつー。ユキト。今日一緒に帰れる?」

 とかなり元気な話し方なのだ。

「おう、大丈夫だよ。」

「じゃ、またねーん」

「おー」

 

 ってな感じだ。

 

 でも二人きりになるといつもの大人しい由

 奈子に戻るのだ。

 

 放課後

 

「じゃ、帰ろっか」

「うんっ」

 

 オレたちは、ゆっくりと歩き出した。

 

「ねー、ユキトくん」

「ん?」

「わたし、バイトもう一つ増やそうと思うん

 だ」

「えっ⁈何で?」

「わたしね、卒業したら家を出るつもりなん

 だ。だからお金貯めよっかなって」

「あー、そういうことか。」

「うん。それに家に居てもすることないしさ

 っ。一応彼氏には、お知らせ!フリの彼氏

 だけどね」

 由奈子がニコっとした。

 

 …

 

 オレは由奈子に何もしてあげれない…

 由奈子のこと何も知らないし…

 

 でも、由奈子を守ってあげることなら出来

 るよな…

 

「…オレも一人暮らししよっかな」

「えっ?」

「だっていつまでも親に迷惑かけるわけにも

 いかないもんな!自立ってやつ」

「…自立か。うん!いいと思うよ」

「じゃ、オレもバイト掛け持ちすっかなー」

「あっ、わたしに無理して合わせなくてもい

 いからね」

「うん。そんなんじゃないから大丈夫」

「そっか」

 

 ということでオレたちは、卒業したら一人

 暮らしをするための資金を貯めることにし

 た。

 

 …でも、由奈子は何で一人暮らししたいの

 かな。

 家に居ても何もすることがないって…

 

 …由奈子。

 

 …

 

 続く。

 

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