第19話 針生家にて②
「ただいまー。
…やっぱりお母さんはまだ帰ってないみたい。」
咲良は先に入ると部屋の電気を付け、俺にスリッパを出してくれた。
「…お邪魔しまーす…。」
針生家はアパートの2階の1室にあり、玄関を入ると女性2人の家であるからか、家具やカーテン等はパステルカラーが多めに使われている趣味の良い感じで、間取りは2DKの様だ。
咲良のお母さんはまだ帰宅していない様なので、出来るだけ早く料理を作ってしまおうという事になった。
咲良はエプロンをすると、俺にもエプロンを貸してくれた。
女の子のエプロン姿って可愛いよな…。
そんな事を考えながらモソモソとエプロンの紐を結んでいると、咲良は手際良く準備を進めて行く。
最初は付け合せの野菜を作るらしい、ジャガイモといんげんとニンジンの皮を剥いたりするのを手伝った。
その後咲良は電子レンジを使ったり、煮たり焼いたりしていたが、俺は多分これは自分で作らないから適当に見ていよう。
次はハンバーグだ。
タマネギを刻み、フライパンで炒める。
ボールに挽き肉と塩を入れて混ぜる。
追加で胡椒、パン粉、炒めたタマネギ、牛乳、卵を入れて混ぜ、楕円形にまとめ、両手を使って掌でハンバーグを行き来させ、中の空気を抜く。
咲良がやると簡単そうに見えるが、やってみると意外と難しい。
俺は思った事を咲良に聞いてみた。
「ちゃんと空気抜けてんのかな…抜けなかったらどうなるんだろ?」
「空気を抜かないと、焼いた時にハンバーグが割れて中から肉汁が出ちゃうからだよ。」
「ちゃんとやらないといけないのは解ったが、手加減が判らないな…本気でやったらハンバーグがスッ飛んで行きそうで怖い。」
それを聞いた咲良は笑っていた。
続いて空気を抜いたハンバーグに窪みを作り、焼く。
途中で水を加えてフタをし、蒸し焼きにする。
焼けたらハンバーグと野菜をを皿に盛り付けておき、フライパンの中の肉汁の出た油にソースとケチャップを入れ、温めながら混ぜ合わせてハンバーグソースを作り、それをハンバーグに掛けて完成。
3人分準備出来たところで、玄関ドアが開いた。
「ただいまー…あっ、君が片倉君ね?
初めまして、咲良の母の
紺色スーツを着込んだ黒髪ショートヘアの、咲良に良く似た大人の女性が玄関に立っていた。
「あっ…初めまして、片倉楓といいます、お邪魔してます。」
どうして俺が家の中に居ても驚かないのか不思議に思っていると、咲良が
「あぁ、今日楓君を連れて来るかも、ってお母さんには言ってあったから。」
「あぁ、そうなんだ…。」
俺は生返事をしながら、咲良と付き合い始めたという事を、いつお母さんに切り出せばいいかと考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます