第18話 針生家にて①

 あー…なんだ、針生…じゃなくて、咲良の距離が結構近いんだが…。

 告白したからって、そんなに急に距離って縮まるモノ?

 ゆうひの丘から引き続き、帰りの電車内でも俺達はそのまま手を繋いでいた。

 勿論、イヤだというワケでは無いよ?

 とても嬉しいけれど、さっき俺が告白した時の咲良の返事がどうしても気にかかる…。


 俺達は過去に逢っていた…?

 イヤイヤ、あんな美少女を俺が忘れるとは思えない…が、咲良に正直に、

『俺達、昔逢った事あったっけ?』

とか聞いたら色々とお仕舞いな気がする…。

 でも既にさっき告白で、『君を初めて電車内で見たあの日…』

とか言っちゃったし…

 自分で地雷を踏むのも怖いから、ちょっとこの問題は触れないで保留しておこう。



 咲良の家の最寄り駅である東府中駅に着いたので、2人で電車を降りてスーパーに入る。


 俺がカゴを載せたカートを押しながら、咲良が食材をカゴの中に入れていく。

 咲良は今日は何を作るんだろうな… 

 今日はもう遅いし、俺は帰ったらスーパーで弁当を買おう。

 咲良がレジで会計を済ませ、学生鞄からエコバッグを出して食材をせっせと入れているのを眺めていたら、


「今日はハンバーグだよ、楓君も食べてって。」


と咲良が俺に笑顔をくれた。

 俺は大きく膨らんだエコバッグを咲良から受け取りながら、2人でスーパーを出る。



「えっ、俺は遠慮するよ、お母さん帰って来るんだろ?

 それに今日は平日だし明日も朝から学校だからさ。」


「お母さんは帰りは遅いって言ってたけど、もし帰って来たら楓君の事を彼氏だよって紹介出来るし。

 それに楓君はどうせ帰ったらお弁当を買うんでしょ?

 ハンバーグもそんなに難しい料理じゃ無いから、レパートリーを増やす積りで一緒に作ろっ?ねっ?」


「うん、それじゃあお邪魔しようかな。

 あっ、なら材料費払うよ、後で受け取って。」


「えーっ、いいよ、2人分も3人分も大して変わらないから。」


「じゃあ今度からデートで発生する料金は俺に払わせてくれ。」


「えー、それこそ悪いよ、デートに行き辛くなる。」


「いいんだよ、その為にバイト始めたんだから。

 それに咲良料理教室の月謝だと思って。なっ?」


「うーん…またその時が来たら2人で考えよう。」


等と色々会話をしていたら、咲良の家に着いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る