第9話 ショッピングモールにて②
俺達はそれぞれ入りたい店に立ち寄りながら、会話を続けていた。
「片倉君、コンタクトは普段はしないんですか?」
「あぁ、目に入れてる異物感があまり好きでは無いから、普段はメガネだな。
コンタクトは前に部活をやっていた時に使っていたんだ。」
「部活って、何部です?」
「柔道部。本当は柔道じゃ無くて、隣の家の爺さんから柔術を習っていたんだけど、近い学年の競争相手が居ないから自分がどのくらい強いのか判らなくて、自分の実力を確かめるために柔道部に入ったんだ。」
「柔術?って、何ですか?」
「あー、柔道の基礎となった、昔からある格闘術の事だよ。
今で言う、総合格闘技かな。
殴る、蹴る、投げ技、関節技、絞め技、何でも有りみたいな。」
「だから痴漢を簡単にやっつけられたんですね。
あの時は凄かったです、犯人を投げた後にいつの間にか手にビニール袋を被せていて。
もう柔術はやってないんですか?」
「うん、教えてくれてた爺さんは死んでしまったし、柔道も中学で辞めた。」
「何故です?」
「実は高校に受かった途端、父親が熊本に単身赴任する事になって。
家事が出来ない父親に、母親も付いて行ってしまったんだ。
だから家の留守番と家事を全部俺がやらないといけなくなって、部活と両立出来ないから。」
「…じゃあ、今は独り暮らしなんですか?」
「まぁ、そうなるな。
…針生、今更だけど敬語は使わなくていいよ、それとも敬語の方が話しやすいのか?」
「…うん、じゃあ普通に話す様にするね。
片倉君、食べる物はどうしてるの?
自分で作ってるの?」
「学校帰りにスーパーに寄って、材料を買って作ったり、弁当を買ったり、弁当を買ったりしてるな。」
「それ、割合的に弁当の方が多いって事だよね?」
「そうだな、宿題とかあると料理を作ったり調理器具を片付けたりする時間が勿体無くて、つい弁当に…。
でも、土日とかはチャレンジしてるぞ。」
「チャレンジってw
…じゃあ、今度痴漢から助けてくれたお礼に私が料理を作りに行ってあげる。
片倉君の家は私の家と多分そんなに離れてないよね?
私は片倉君が乗って来る駅の隣の東府中駅から乗ってるから。」
「隣駅?じゃあ自転車で行ける距離だな。
…でも、そんな、悪いよ。
それに俺は独り暮らしだから、そんな所に女の子が1人でのこのこと来ちゃダメだ。」
すると針生は急にニヤニヤし始め、後ろ手に手を組みながら俺を下から覗き込み、意地の悪い質問をした。
「あっれー?片倉君は、私を襲う気なんですかぁー?」
「ちっ、違う!…と…思う…。」
「あらあら、随分と自信の無さそうな返答ですね、まさか本当に本気で私を襲う気ですぅ?」
「…きっ…キミみたいな魅力的で綺麗な子が家に居たら、絶対に襲わないという自信は無い…から…。」
俺が真っ赤になって本音を言うと、今度はニヤニヤしていた針生が真っ赤になり、急にアタフタし始めた。
「あっ、あの、本当は今日は片倉君が欲しいって言った物をお礼にプレゼントするつもりでここに来てもらったの…。
でも、もし高すぎたら買ってあげられないし、私料理は得意だから、だから…」
「…解った、じゃあ、お言葉に甘えようかな。
針生、ウチにご飯を作りに来てくれないか。
モチロン、襲わないって約束するから。
俺も物を貰うよりはそっちの方が嬉しいよ。
出来たら、俺にでも作れる比較的簡単なものにしてくれないか?
ついでに作り方を教えてくれるとレパートリーが増えて助かる。」
「うん!じゃあ、片倉君の作れる物を教えてくれるかな、それ以外のものを考えておくから。
作りに行くのは土日とかでもいい?
平日は厳しいかな、
2人は次の予定を話しながら、ウインドウショッピングを楽しむのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます