第49話
四十九
夫
点と点が線で繋がったが、その線は太く、幾重にもねじ曲がっていた。そんな印象だった。
妻
沙月はベッドに座り込み、ずっと俯いている。勝廣も何も喋らない。
呉谷から最初に脅迫されたときからの出来事を、沙月は勝廣に全て話していた。
脅迫の原因となった過去の万引き、そこから呉谷とずっと肉体関係をもっていたこと、呉谷とシン・アライアンス株式会社とのいざこざ、そこからシン・アライアンス株式会社のチンピラによる監視、凌辱。そして……人を殺したこと。
これを言えば、勝廣に見捨てられる、警察に突き出されるだろう。それは分かっていたが、もう黙っていることは沙月にはできなかった。お婆さんにも裏切られ、沙月はもう孤独に耐えられなかったのだ。
沙月にとっては、一時間以上もの長い時間に感じられた。だが、実際には数分だった。勝廣が口を開いた。
「沙月……」
沙月は、極悪人だとののしられ、糾弾されるのを覚悟した。夫を裏切り続け、貞操観念が破綻している、人間以下の存在だと見下されることも。
しかし、―
勝廣は沙月を引き寄せ、抱きしめた。
「辛かったな…… ごめんな、気付いてあげられなくて」
「え……?」
その言葉は、沙月が予想していたどれとも違っていた。
「全部分かった。もう怯えなくていい。俺が沙月を守るから」
気付かぬうちに、沙月の顔が涙で濡れていた。
「そういうことなら、もう行こう。ここを離れないと」
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