南大陸地下48階層
ここは元南アフリカの真下にある南大陸連邦の存在する48階層だ。ここには連邦政府があり、現在連邦会議の真っ最中だった。議題は”北大陸連合との国交における条約”についてだ。直通列車が32階層に通っており、行き来こそできるものの、その簡易さから密入国する難民が近年多く連邦政府は困っていた。年間2000人は見過ごすことはできない。
「難民受け入れの法制度を立てるしかないだろう」
一人の議員が言う。もはや反論の余地はない、いつもの議題でどうこう反論している派閥も押し黙ってしまっている。
「難民を受け入れるにも資金がないのでは?」
議員が反論を受ける。事実財政難ではある物の、過去の借金に比べれば大したことはない。と、いえば聞こえはいいものの、現実として150階層にも連なる縦穴を維持するには莫大な資産を持つ。そのための大陸連邦であり、連邦をもってしても維持するのがやっとの代物である。北大陸連合は莫大な資金があるが貧富の差が大きく、その結果難民が発生し貧困層が南連邦への大陸間横断鉄道の線路を歩いて密入国してきている。ここ数ヶ月は駅のある地区で自警団が立ち上がり密入国の取り締まりをしているが100%カットしているわけではない。むしろ賄賂で黙認している事実もある。
「連邦軍を投入するのはどうだろうか、そうすれば賄賂を受け取ることもないだろう」
「派遣費用はどこの国が持つんだね?連邦の問題は各国の問題でもあるんだぞ」
「なら各国で割合負担するしかないだろう。区域割合の多さで割合負担をするのは?」
議員はそれを即各国の連邦長に通達し、善し悪しの判断をしてもらう。結果、彼らの法案は議会を通り国民に公布された。
”1条、密入国者対策として連邦軍を派遣し警備に当たる。自警団とも連携する。
2条、密入国に対する対策として連邦軍が捕らえた者は強制送還する。
3条、密入国者を匿った者は禁固10年または25万南邦ドル以下の罰金に処す。(旧米ドルでおよそ5千ドル)”
連邦民は特に変わった様子を見せずその後も生活を続けた。と、いうのも元々難民の密入国にはたいして金も持たないのに『匿ってくれ』というものだから辟易していたところだったのだ。もちろん同情の余地はあるのだが、残念ながら連邦で難民受け入れの法案が通るまで、もう少し時間がかかり、難民に対する連邦民の理解もまだ少し先になるだろう。
~地下都市150階層~ 小雨(こあめ、小飴) @coame_syousetu
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