第12話 とらわれの
「姫様、
「おヨネ、どうしたの。食事の時間でもないのにこんなところまで。早く戻りなさい、鞭打たれてしまうわ」
慌てる声に反応するように、部屋の奥からはたおやかな鈴のように澄んだ声が響く。
部屋の中は布団、着替えの入った箪笥と、櫛等の身支度用品が置けるだけの小さな机があるだけで、ガランとした空間が広がっていた。
部屋の奥、唯一ある引き戸の向こうは厠で、天井に明り取りのはめ込みガラスがある、窓も何もない部屋。
息を切らしてやってきたヨネを心配しながら、部屋の奥からゆっくり現れたのは、美しく輝く床につかんばかりの長い緑の黒髪と、肌理の細かい白い肌を持ったそれこそ、まるで夜空にうかぶ月のように美しい少女。
今にも倒れてしまいそうなほど細い体だったが、しなやかであり女性の美しさと艶めかしさを併せ持っている少女だった。
「鞭打ちなどかまいません。それに今はそれどころではなく、この場所に人がやってくることはありません。姫様もっとこちらへ」
姫と呼ばれたその少女は蒼雲の妹、
母親とは引き離され、初めこそ
そしてその
目的は当然女達が有しているとされていた特別な力を手にするため。
ただ、ヨネは
ヨネのような女はそれなりに居たが、ある程度年齢の行ったものは、特別な力を有していないとわかった時点で殺されるか、過酷な労働の奴隷となることが多かった。
そんな中、たまたま
ゆっくりと格子の近くまで歩いてきた
「そんなに息を切らせて、一体何があったというの?」
「い、今、この城では諸国の城主達が集まり相談をしています」
「そう。また、悪巧みでしょう。私には、関係無いわ」
そんな
「姫様、今日は違います!」
ヨネは格子の間から手を伸ばし、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。