第13話 きぼう
「
ヨネの口から飛び出した
「え? お兄様が? でも、お兄様は既にこの世には居らぬと
「嘘だったのでございます! 私は先程この耳でしっかりと聞きました! 生きておられたのです。そして
ヨネの手をギュッと握り返して花音が聞く。
「本当に? おヨネ、それは本当なのね?」
「えぇ! 間違いございません。
「
感情のない様に無表情だった
「ただ、
「そうね。でも、でも、生きておられたなら私はそれだけで」
涙を流しながら、たおやかに微笑む
「姫様のその様な笑顔。何年ぶりでございましょう」
「おヨネ……」
「
「私は……、皆の苦しみも知らず、母上の苦しみすら感じず、のうのうと
ホロホロと涙を流す
「仕方がないことです。姫様は幼く、理解することなど無理でございました」
「事実を知った時、私はただひとつの事を思うようになった。皆を救うにはどうすればいいのか。でも、私のような小娘に何が出来よう。実際、少しの反抗でこのような場所に閉じ込められてしまった。結局何も出来ない己の身が憎らしく、自分の存在理由を見出せなかった」
「姫様……」
「母上と離され、このような場所に監禁されて外の様子は全く分らない。皆がどうしているのかはおヨネ、お前からたまに様子を聞くだけ。そして数年前に
「そうですよ、姫様。
「そう……、そうね。兄上は今もどこかで前へと進んでいるのね」
「はい、おそらく」
「私も立ち止まっては居られないわ。兄上の為に出来る事を考えないと」
ニッコリ微笑んでヨネの手を両手で握り返した
二人は暫く互いの体温を確かめ合うように黙り込んだ後、ふと
「そうだわ、この事を母上にも。ね? おヨネ」
明るい声で言う
その様子に首をかしげて
「おヨネ? どうしたの?」
ヨネは花音と重ねていた手をスッと引いて、目を伏せ、喜びとは違った涙をこぼす。
「奥方様は。私たちでは入れぬ場所に囚われて居りますゆえ、お知らせする事もかなわないのです」
「え? どういうこと?」
「申し訳ございません、それは私の口からは」
そういって、口篭り唇を噛み締めながら泣くヨネの姿に、
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