第16話 二人のクリスマス
今日は二十四日、つまりクリスマスイブだ
本来、クリスマスというイエス・キリストの生誕を祝う日は明日なのだが、世のほとんどの人たちはその前日のイブに盛大にパーティーをしたり、カップルたちがイチャコラするのだ。非リアになった俺からすると「滅べばいいのに」という感情しか湧いてこない。
しかしまぁ、今は冬華だっているし、これ以上望むものはないけどな。
今日だって二人でクリスマスを祝う予定だ。
俺は陽翔や冬華の親しい友人を呼んでパーティーでもしようかと提案したが、二人が良いと言われてしまった。
俺としては、冬華と二人でより誰かいたほうが良いんだがな。
ただ、二人がいいと言われてしまった以上、その要望に答えるほかはないだろう。
そんなことを考えているうちに、終業式の校長の長ったらしい話が終わった。
いつも思うが、校長の話というものはなぜこんなにも長いんだろうか。
話の内容も本当に薄っぺらいし、要は冬休みの間、勉強を怠るなということを言いたいのだろうが、よくもこんなに長く出来たものだ。
話の長さに感心しながら教室へと帰っていると、ポケットに入れていたスマホが震える。
確認してみると冬華からだった。
内容は「学校帰りにこの前のケーキ屋に行こう」というものだった。
またすぐに「帰りにアタシのクラスに来て」と追加で送られてきた。
陰キャの俺に他のクラスに行って女の子を呼ぶなんて行為ができるのか?と心配になりながら「了解」とだけ返しておいた。
♢♢♢
LHRが終わった後、俺は少しでも人が居なくなってから冬華の教室に入ろうと思い、1人教室で時間を潰すことにした。
そういえば冬華、先週の日曜日に友達と遊んでくるって出掛けて行ってたけど、今日はその友達の人とかは一緒じゃなくて良かったのだろうか。
もし少しでも俺に気を遣ってるのなら、申し訳ないな……。
あいつ、見た目にそぐわず真面目なとこあるからなぁ。居候させてもらってる身で、なんて考えてるのなら、俺の方が申し訳なくなってくる。
そうこう考えているうちに自教室に残っている生徒がまばらになってきて、そろそろ冬華の教室へ向かおうと思い、立ち上がった。
すると教室の後ろのドアの方から「夏樹ー!」という元気な声が聞こえてきた。
冬華だ。
せっかくあまり人に見られないようにしようと考えてたのに、まだ人の居る教室でそんなに大声で叫ばれたら目立つだろ。
心の中で少し呆れながら、俺は急いで荷物を持ち冬華のもとへ駆け寄った。
「なんで教室来てくれないのー!夏樹が全然来てくれないからアタシから来ちゃったじゃん!」
「大勢の前で冬華に話しかけるのはハードル高いんだよ」
「えーひどいっ!」
冬華はぶーぶーと文句を言いながら俺を小突いてくる。
その光景を見てか、クラスの奴らがヒソヒソと話しだしている。
冬華はあまり男子と関わらないのに、イブに男子と仲良さげに話していたらどう思われたって仕方ない。
だが、俺としては一刻も早くこの場から抜け出したい。
「はやくケーキ屋に行くぞ。イブだし売り切れてしまったら困る」
「そだね、じゃあいこっか!」
そう言って冬華は上機嫌に歩き出した。
そして例のケーキ屋に着いて、ショーケースを見てみると、運良くいちごのホールケーキが1つ残っていた。
4号と2人で食べるには大きいが、せっかくだしホールケーキの方が気分もあがるだろうと思い俺たちはホールケーキに決めた。
冬華は「値段高いし前みたいに2つでいーよ?」と遠慮気味だったが、俺はその提案を拒否し、ホールケーキで押し切ったのだった。
「ほんとに良かったの?結構高かったのに」
「いいんだよ。イブだし奮発しないとな」
「そっか、ありがとっ!」
冬華はそう言って冬の寒さも吹き飛んでしまうような眩しい笑顔を見せた。
***
作者の東雲です。
前回の投稿からすごく長い月日が経ってしまいました。もうしわけない。
さて、15話と短いですが書いてきた『初めて出来た彼女に浮気されたらギャルと同居することになった』ですが、この話をもちまして、一旦お休みということにさせていただくことにしました。
今までも休んでいたのと同じなんですが、多分もう更新はないと思います。
私情で小説を書く時間が減ったり、様々な理由があるんですが、これを最後にします。
今まで応援してくださった皆様、ご愛読くださった皆様本当にありがとうございます。
もしかしたらまた更新しだすかもしれないので、その時はまた読みにきてくださいね!
ありがとうございました!
初めて出来た彼女に浮気されたらギャルと同居することになった 東雲 時雨 @shinonome0607
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