第15話 冬華へのプレゼント
クリスマスが四日後に迫った月曜日の朝、俺は教室で悩みに悩み込み頭を抱えていた。
悩みのタネは今朝の冬華の発言だ。
それは俺達が朝、四日後クリスマスということについて話していた時の話。
『プレゼントしっかり用意してるから楽しみにしててねっ!』
そう、俺はこの時冬華に言われるまで気づかなかったのだ。
―――俺が何もプレゼントを用意していないということに……。
さて、どうしたものか。
プレゼントを買ってあげたいのは山々なんだが何を買っていいのかさっぱりだ。
コスメとかにも詳しくないし、女子が喜びそうなものなんて知らん。
……やっぱクリスマスだし、アクセサリーとかの方がいいのか?
なら、リングとかか……?
いや、それは重すぎるか。
あーもう!分っかんねぇ!
♢♢♢
という感じで、悩みながら登校してきたのだ。
そして、一向にいいプレゼントが思いつかず、頭を抱えていると、一人の男子生徒が声をかけてきた―――暖翔だ。
「おはよう夏樹、月曜の朝っぱらから頭抱えてどうかしたの?」
「はよー、実はな――――」
そして俺は今日の朝の事を一通り暖翔に話した。
「なるほど……で、夏樹は何を知りたいんだい?」
「それでさ、俺も冬華になにかプレゼントを送りたいんだが、どういうものが喜ばれるのかが全く分からなくてな。……それでなんだが暖翔、どんなものが良いか教えてくれないか?」
「まぁいいけど、……なんで僕なんだい?女子に聞けば手っ取り早いでしょ」
「なんでってそりゃあ、女慣れしてそうだし彼女は五人くらい居そうだから?それにあんまり仲良い女子の友達なんかいねぇよ!嫌味か!?」
「別に嫌味じゃないよ。というかさ、彼女五人居そうって最低だね夏樹!親友にそんな事言うなんて酷いよ!」
「ごめんごめん、冗談だよ」
そう言って俺は笑って誤魔化す。
だが実際の所は少し怪しんでいるがな。
なんたってこの男超が付くほどのモテ男なのだ。
髪も少し明るい色に染めてるし、ピアスも開けてる。
一ヶ月に一回は告白されているくらいなのだ。
本当に、なんでこんな奴が俺とつるんでるのか分からない程だ。
そんな暖翔だが、彼女は未だに出来たことはない。
……それには理由があるのだ。
暖翔には歳が四つ離れた姉がいるのだ。
そのお姉さんは今大学生な訳だが、それが本当に美人なのだ。
それが理由なのかは知らんが、暖翔の奴は超モテるのに、超超超シスコンなのだ。
つまり姉大好き人間だ……。
とまぁ、こんな感じだから他の女子には見向きもしないのだ。
………ほんと、もったいないよなぁ。
っと、そろそろ話を戻すか。
「で、本当に相談なんだけど、どんなのが喜ばれると思う?」
「そうだね……、やっぱりあんまり高価過ぎないものかな」
「……なんでだ?高いほうが良いんじゃないのか?」
「そんな事ないよ。高すぎたら扱いに困ったりするしね、特別な関係じゃないなら尚更だね」
俺は「へー、そうなのかー」と軽く返しながら考える。
高すぎるのは駄目なのか………。
てっきり高ければ高いほど喜ばれるのかと。
まぁ、冬華は遠慮しがちだし、確かにそうかもな。
「後は、普段使い出来て可愛いものとかかな。やっぱり普段から使えるものの方が貰ったら嬉しいしね、あとやっぱり女の子は可愛いものが好きだからね」
「そうか……普段使い出来て可愛いもの―――全く見当がつかないな」
「そういうのは店で店員さんとかに聞いた方が早いよ」
「そうだな、じゃあとりあえず今日の帰り見に行ってくるよ」
「うん。あ、あとアクセサリー類はやめといた方が良いよ。高校生のプレゼントにしては重すぎるからね。最悪引かれちゃうから」
「……そっ、そうなのか。アドバイスありがとう」
「うん、じゃあまたね」
暖翔はそう言って自分の席に戻って行った。
……というかマジで暖翔に聞いて良かったわ。
朝の俺アクセサリー買おうか、とか考えてたし!
まぁ、とにかく学校終わったら買いに行くかー。
……あ、今日遅くなるって冬華に連絡入れとかないとな。
俺はスマホを操作し冬華にメッセージを送り、またうつ伏せになる。
♢♢♢
学校が終わり俺は急いで大型商業施設へと向かった。
暖翔にアドバイスを貰ったとはいえ、全くセンスのない俺がそんなにいいものを見つけられる訳も無く、かれこれ三十分はこの店に滞在している。
三十分いて何も買わないなんてとんだ迷惑客だな……。
心の中でそう思ってはいても、本当に何を買えば良いのかわからない。
俺が「うーん」と唸っていると、一人の若い女性店員がこちらに移動してきた。
「何かお探しですか?」
「あ、はい……」
ここで一つカミングアウト。
………俺、実はコミュ障なんだ。
そう、となるとこの状況、俺にとっては最悪の事態なのだ。
確かに店員に聞けば良いプレゼントとか教えてくれるんだが、コミュ障の俺にはレベルが高いんだよなぁ。
どうしたものか、と肩を竦めていると、店員さんが少し態度を明るくして再度話しかけてきた。
「あのっ、そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ?私も北瀬くんと同じクラスなんですし」
……えっと、えっ!?
この店員さん俺と同じクラスなの!?
やばい、全く見覚えがない。でも相手は俺の名前知ってるし本当なんだろうな……。
この場合、俺ってめっちゃ失礼な奴じゃね?同じクラスの女子の事も覚えてないなんて。
「……え?同じクラスって、ウチの学校なの!?」
「あ……はい、分かりませんでしたか?」
「い、いやすまん。ちょっと人の事覚えるの苦手でさ」
「いえいえ、私は
「……うん、よろしく南那宮さん」
南那宮さんね……自己紹介したんだがらしっかり覚えとかないとな。
「それで北瀬くん、何かお探しだったんじゃないんですか?」
「あぁ、そうだった。プレゼントを上げたい女友達がいるんだけどさ、どんなものがいいのか教えて欲しいんだけど」
「……そうですね、それでしたら――――」
その後、今話題の人気商品!とか、可愛い雑貨とか、いろんな商品を紹介して貰い、何とかプレゼントを決める事が出来た。
俺はスマホで時間を確認してハッとした。
しまった……!
俺の事に、わざわざ一時間以上も付き合わせてしまった。
「……ご、ごめんね南那宮さん、一時間も付き合わせて、しかも仕事中に」
俺は深々と頭を下げながら謝罪をする。
「いえいえ、お客様のお困りを解決するのも仕事の内ですよ」
「……それでも、今日は本当にありがとう、助かったよ。出来れば何かお礼したいんだけど……」
「いやいやっ!お礼なんて大丈夫ですよ、私は仕事の内なんですから」
「それだとオレの気が収まらないからさ、何かさせてよ?」
「……ま、まぁ、北瀬くんがそこまで言うなら。でも、物を貰うのは気が引けますしね……」
そう言いながらうーんと顎の辺りに手を当てて考え込む南那宮さん。
「なら……、連絡先を交換しませんか?ここで会ったのも何かの縁ですし」
「連絡先?そんなのでいいんだったら幾らでも交換するよ」
俺はポケットからスマホを取り出しQRコードを表情させる。そしてそれを南那宮さんが読み取る。これで完了だ。
すると、早々に着信音が鳴った。
トーク画面を開けると、可愛いうさぎのスタンプで、『よろしくっ!』と送られて来ていた。
「ははっ、可愛いなこのスタンプ」
「ですよねっ!私のお気に入りです」
そう言うとどんどんとうさぎのスタンプが送られてきて、「分かりやすいな」と吹き出してしまう。
そうこうしていると、南那宮さんの元に違う店員さんがやって来て、「そろそろ交代の時間だよ」と告げる。
「じゃあもう時間ですので、私は戻りますね」
「ああ、今日はありがとう、また連絡するよ」
「はいっ、お待ちしています。それでは」
そう言うと、南那宮さんはペコりと頭を下げて店の奥の方へ戻って行った。
いやー、南那宮さんが居てくれて助かったなぁ。
やっぱり一人で来るんじゃ無かったな。
まぁでも、一人で来たからこそ南那宮さんと知り合えたんだし、まぁいいか。
それにしても、普段コミュ障の俺が初対面の人とあんなに喋れるなんてな、自分でも驚きだ。
南那宮さんは優しい雰囲気だったから平気だったのかな……?
……まぁ考えても仕方ないかっ。
今日はいい買い物出来たし、早く帰って冬華に晩御飯を作らないとな。
***
☆をたくさん頂ければたくさん書きます。
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