第14話 夏樹へのプレゼント
♡♡♡
クリスマスが五日後に迫った日曜日。
アタシは夏樹に「友達と遊びに行ってくる」と嘘をついて、大型商業施設に夏樹へのクリスマスプレゼントを買いに来ていた。
今日はお金の方の心配はいらない。
昔の家からアタシの最後の貯金を先週のうちにとりにいっていたから。
といってもあまり高いものは買えないけどね。
だけど!
今日のアタシは一味違うよ。
なんてったって、夏樹の親友の……えっと、名前何だっけ、忘れちゃった。
まぁ、いっか!
それでその親友さんに夏樹の好きな物を聞くためにわざわざ休み時間に会いに行ったの。
♡♡♡
「………それで、僕になにか用かな?」
そんなわけで、アタシは夏樹の事をよく知っていそうな夏樹の親友のところまで来ていた。
「うん……あなた、夏樹の親友なんでしょ?」
「そうだね、僕は夏樹のこと親友だと思ってるし、夏樹
同じなんじゃないかな。……あ、ちなみに僕の名前は
「あ、そうなんだ。アタシは
そうなのだ、見た目はギャルしてても、これはただの社会を生き延びるための装備に過ぎないし、実際アタシは心を許した人にしか名前で呼ばれたくない。
……夏樹は例外だけどねっ。
「了解。ところで西辻さん、なにか僕に用があるんじゃないの?夏樹のことだよね?」
「……うん、ちょっと夏樹の好きなものって何なのかなって気になって……」
「………?あ!クリスマスプレゼントのことね」
「ちっ、違うしっ!好きなものがなにかちょっと気になっただけだし、そもそもアタシが夏樹なんかにプレゼント上げるわけ無いじゃん!……べ、別に普段お世話になってるから、せっかくなら喜んでほしいとか思ってないから!」
「ははっ、うん、そうだよね。ごめんね勘違いしちゃって」
「ううん、わかってくれればいいのっ」
………って、あれ?
アタシ今自分で全部言っちゃってた?
うあああああああああああああ!恥ずかしいいいいいいいいい!
自覚した途端、自分の顔がさっきよりも赤く上気するのが鏡を見なくてもわかる。
恥ずかし……!
「うーん……そうだね、夏樹は料理とかが好きだと思うよ。前も料理している時間は心が安らいで好きって言ってたしね。………あ、あと少し前キャンプにハマったって言ってたかな」
「そっか、料理にキャンプ………。教えてくれてありがとっ、じゃあアタシはこれで!」
冬華が廊下を走り去ってから、陽翔は一人取り残された廊下でポソリと呟く。
「………ほんとに冬華ちゃんは夏樹以外に興味を示さないなぁ。ま、夏樹にとっては良いことなんだけどね、本人は自分の気持ちを自覚してないみたいだけど」
♡♡♡
そんなこんなで、学校の近くにあるショッピングモールに来たわけだけど………。
東條とかいう夏樹の親友に聞いて、好きなのは料理とキャンプっていうのはわかって種類は絞られたけど、結局そこから一歩も進んでないのが現状。
キャンプ用品はさっき見たけど、しっかりしたのを買うとなると、今のアタシの所持金を考えると本当にちょっとしたものしか買えなくなってしまう。
でもなぁ、せっかくだからしっかりしたなにかを贈りたいしな〜。
そしてまた一人で頭を抱え込む。さっきからこれの繰り返ししかしてない……。
まあ……キャンプ用品は難しいにしても料理も好きって言ってたし、そっちなら買えるものもあるはず………!
……そう思ってたアタシに一言言ってやりたい。あんたはバカか、ってね。
キッチン用品売場に付き、一通り商品棚を眺めて気付いたの。
アタシ……、どの道具を何に使うのかもわかんないし、そもそも家にどの調理器具があるのかさえ知らなかった……。
今まで家事をひとっつも手伝ってこなかったアタシを一発殴ってやりたい気分!
……はぁ、どうしよう。
アタシは大きなため息を吐きながら、なんとなく家で料理している時の夏樹を想像してみる。
家ではいつも料理を作ってくれる夏樹。
トントン、とリズム良く聞こえて来る包丁の音。
そしてふわりと香って来る美味しそうな匂い…………。
――――クキュルルルルル
あっ、想像してたらお腹なっちゃった。
周りに人居ないからセーフ、危ない危ない。
でも、考えてみれば夏樹っていつも楽しそうに料理してたかもな〜。
……う〜ん、プレゼントどうしよう。
………あっ!夏樹アレ持ってなかったかも!
思い返してみればいつも料理してる時つけてなかったし、多分持ってないでしょ。
よしっ!そうと決まれば早く夏樹に似合いそうなのを見つけてかえろっと。
お腹空いて来ちゃったし……。
で、お目当てのモノが売ってるところまで来たわけだけど………男物が全然種類ないんだけど!
何着かは置いてあるけど、夏樹への初めてのプレゼントだし、しっかり凝ったやつを買ってあげたいのになぁ。
さっき店員さんに聞いたけど売ってるのはここので全部って言ってたし、どうしよう。
でも今から他のお店に行くとなると、帰りが遅くなって心配かけちゃうだろうし、ここで決めたほうがいいよね。
アタシは数着あるソレを一つ一つ手にとって夏樹がつけているのを想像する。
「あ、これ絶対かっこいいなぁ。……あっ、こっちは優しい感じが出ていいなぁ。あぁ!これも絶対似合うじゃん!」
だめだ………、全部似合いそうで一つに絞れない。
それもこれも夏樹がかっこいいからいけないんだよ!
そう、夏樹はかっこいいの。本人は気付いてないみたいだし、直接言っても「お世辞はいらん」とか「おだてても何も出ないぞ」とかしか言わない。
お風呂上がりでまだ髪の毛が濡れてる時とか、色気が増しててほんとにかっこいいと思う。
ま、何を言っても夏樹は信じてくれないんだけどね。ほんと夏樹って卑屈。
で、結局どれにするか決まってないや。
でもやっぱり夏樹はかっこいい系の物より、優しい感じのほうが夏樹っぽいし、これにしよっと!
アタシは足早に会計を済ませ、急いで家に帰る。
早く帰って夏樹のご飯食べたいな!
***
どうも作者の東雲です。
前回とかなり間が空いてしまってすみません。
私情により3月辺りまではこのようなことが増えると思いますが、ご理解いただけたら幸いです。
さて、お互いにプレゼントを買った二人ですが、二人は何を買ったんでしょうかねぇ。
それは次回のお楽しみですよ!
といっても、冬華ちゃんの方は気付いてる方のほうが多いと思いますがね。
まあ、夏樹くんのプレゼント、楽しみにしていてください!
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