第10話 勉強会
俺たちの高校では十二月一日から期末テストというものがある。
そして現在は十一月二十日だ。
ということはそろそろ勉強に本腰を入れなければならない時期なのである。
……とか言ってるこの俺はこの時期にならないと勉強を始めないからテストでもいたって平均的な点数しか取れないのだがな。
冬華は勉強とかどうなのだろう。
やはりギャルっぽいし、あまり出来ないのだろうか。
♢♢♢
…………………………。
まぁ、一言で言うと『冬華は俺よりアホ』と思い込んでいたさっきの俺がとても恥ずかしい。
何と冬華はいつも学年十位以内に入るそうだ。
十位以内……、か。俺なんて良くて50位なんだが。
そして今、その事で馬鹿にされている真っ最中だ。
「夏樹はアタシにアホアホ言っといて勉強が!アタシより、し・た!なんだ〜?」
「――――っ!こ……コイツ!」
「素直に「勉強教えて下さい」ってお願いすれば教えてあげない事もけど?」
「八ッ、絶対に御免だな!」
そう大見栄を切ってから数十分後、早速全然理解できない問題が出てきた。
これでも学年50位なのに………。
そうやって一人で気を落としていると、そんな俺の状態を察したのか、冬華の口角が少しだけ上がったのが見えた。
「おい冬華、こっちを見るな」
「えー?やだぁ〜」
そう言うとまたニマニマとしたような笑みを浮かべ出した。
♢♢♢
そしてまた10分後。
うん、さっぱり分かんない。
俺が1つの問題に時間を掛けている間に冬華の方は数ページ先まで進んでいる。
……そろそろ冬華に聞かねばならんか。
そして、意を決した俺は冬華に向かってただ一言だけ発した。
「ここ、教えて欲しいんだが……」
瞬間冬華の顔が表現出来ないくらいまでニマーッとした顔になった。
「それが人に物を頼む態度なの〜?」
この態度本当に癪に障るっ……。
しかし、背に腹は代えられない。
成績が悪ければ一人暮らしを辞めさせられる可能性もあるし、できる限り良い点は取っておきたい。
小さな覚悟を決め、引きつりながらも必死に笑顔を作りもう一度冬華に懇願する。
「……こ、この問題を、教えて欲しい、です」
「えー?しょうがないなぁ、頭の良い冬華さんが教えてあげようじゃないの」
「ぐっ………!あ、ああ」
なんで冬華にこんな事を言われないといけないんだ………。
こんな事なら普段からもっと勉強しとけば良かった。
俺が冬華に教えられる、と落ち込んでいた隙に、冬華が何かガサゴソと鞄を漁っている。
そして、辞めたと思ったら冬華の右手には赤縁のオシャレな眼鏡が握られていた。
今までかけている所も見た事無かったし、普通に気になった。
「その眼鏡、冬華って目悪かったのか?」
「いや、全然。フツーに両目2.0だよ?」
両目2.0て、普通に良すぎだろ。
今時そんなに視力あるやつ居ないと思うんだが。
………あれ?じゃあ何で眼鏡掛けようとしてるんだ?
「じゃあその眼鏡は一体何に使うんだ?」
「ああ、これ?これは伊達眼鏡だよ。オシャレの為とかだね。あと掛けてたら知的美少女っぽいでしょ?」
「茶髪に染めてるんだから無理だろ」
「………あ、確かに」
ニヤリ、実際今俺の顔はそんな言葉が1番似合う顔になっているんだろう。
なんたってこれは冬華を煽り返すまたとないチャンスだ。
「あれ〜?冬華さんは〜、学年トップクラスの頭脳派の持ち主なのに〜、そんな事も分からないの〜?あはは〜。おバカさんだね?」
うん、我ながらこんなにもキモイ台詞を良くスラスラと言えたものだ。
口調までキモくする必要ないのに、なんだかJKの真似したみたいですげぇキモくなってるし。
体も気持ちくねくねさしていたように思える。
「え、キッモ………」
ほらー、やっぱりやりすぎだったじゃないの〜。
あ、さっきの口調離れなくなったわ。
「普通にキモいよ、今の。絶対辞めた方がいいよ。てか二度と魅せないで。目が汚染される。」
「あ、はい。すんません」
結構ガチだったみたい。普通にゴミを見る目で見られたわ。
煽るつもりがゴミ判定されてしまうとは。
まぁ、もういいか。今日は調子が悪いみたいだし、それに冬華がバカなのは今に始まった事じゃないしな。
「ということで、勉強再開するか」
「何が『ということで』なのよ」
「あ、いやこっちの話」
「そう、なら早く始めよ?」
「おう」
そして俺たちは勉強に戻った。
その後も何問か分からない所もあったけど冬華が全部丁寧に教えてくれた。
ギャルの癖に教えるのめちゃくちゃ上手かったし、それに眼鏡を掛けた冬華も言うまでも無くすごい可愛かった。
特に髪を耳にかける仕草が色っぽくて一番グッと来たなぁ。
そうして今日の勉強会は幕を閉じた。
………冬華、また眼鏡掛けてくれるかなぁ。
***
やっとラブコメ週間100位入れました!
ありがとうございます(_ _)
まだまだ上を狙って行きますので、☆、レビューの方よろしくお願いします!
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