第5話 学校

 朝6時半、俺はセットしたアラームで目が覚める。

 隣にいる冬華はまだ寝息を立てて寝ている。。

 両手足を大の字に広げて、何とも無防備な体勢だ。

 思うんだが、こいつは俺の事を男と認識しているのだろうか?少し不安になってくるんだが。


 俺は朝ごはんの用意をしようと思い、キッチンに向かう。

 といっても、パンを焼いてサラダとスープを用意するだけなんだけどな。


 そうして俺は朝ごはんの用意を済まし、ひとりようのローテーブルに並べた。

 だが、冬華に全く起きてくる気配がない。


 そろそろ起こさねぇとな。


 俺は冬華を起こすべく寝室へ向かう。

 中に入るとさっきよりも服がはだけた状態ですやすやと眠っている。

 はだけた部分から見えるすべすべのお腹見て、触ってみたい欲に駆られたが、何とか抑え込んだ。


「おい冬華、そろそろ起きろよー」


 そう声を掛けると冬華は「んぅ〜」と、ふにゃりとした声を出した。

 そして、寝返りを打ったかと思った途端、冬華が俺に手を伸ばして来た。

 俺はそのまま冬華に引っ張られて、布団に引き込まれてしまう。


「っ!おい冬華、離せ、それに早く起きろ!」


 何度言っても起きる気配はなく、むにゃむにゃと言っているだけだった。

 ただ、それ以前にこの状態はマズい。

 俺は冬華と同じ布団に入っており、さらに抱きつかれているのだ。

 それも、少し力を入れれば離せる程だが、結構しっかりと抱きつかれている。

 となると、当然俺の腕には柔らかい物が当たる訳で、さらに男子高校生には強過ぎる刺激な訳だ。

 …………耐えられん!

 今離れたらこの柔らかさを体感出来なくなるという寂しさが来る、だが離れなければいろいろヤバいことになる。

 くっ、人生1番の選択の時だな……。


「夏樹ー、いつまでアタシの胸の感触を味わってるのかなー?」


 ………起きてたのかよ。


「おはよう冬華。もうご飯の用意は出来てるから早く居間に来いよ」

「え……ちょっとまって、何ふつーにスルーしようとしてるの?今アタシと布団に入ってるよね、よくそんな事言えるね」

「………ぐっ、だってしょうがないじゃないか!無防備な格好で寝てるし、それに布団に連れ込んだのお前だろ!」

「あり?そーだっけ?」

「そうだよ!自分からお前の布団に入るわけがないだろ」

「いや?アタシ美少女だから耐えられなくなったのかなーって、」

「お前、よくそんなに自分の事褒めれるな」

「でしょ!」

「褒めてねーよ。まぁ、もう朝ごはん出来てるから居間来いよ」

「はーい」


 そう言って俺は部屋から出た。

 ……欲を言えば、もう少しだけ感触を堪能したかったかな。



 その後俺たちは朝ごはんを済ませ、遅刻ギリギリになりながらも家を出た。


「……で、なんでお前は外でもくっついてるんだよ」

「んー、なんでって言われてもなー。強いて言うなら、こうしていたいから?」


 本当に、軽くこんな事が言えてしまう冬華が怖い。

 冬華のこれは恋心等ではなくただ気に入ってるだけとかそんな所だろう。

 分かっている、分かっているのにドキリとしてしまう自分が悔しい!


 えー、ちなみに今俺たちが歩いてる道は駅から学校へ続くそれなりに大きな道なのだ。

 すなわち、同じ学校へ行く人達の大抵はこの道を通る訳で、そんな中腕を絡ませ、くっつきながら歩いていればそれはそれは目立つのだ。


『ねぇねぇあれ見てよ、彼女可愛いけど、彼氏の方パッとしないね』

『てかあれギャルで美少女なのに男と全然絡まないって有名な西辻冬華じゃね?』

『うわー、釣り合ってねぇ〜』


 といった感じで、さっきからジロジロ見られるし、俺の顔を見てはクスクスと笑って嫌がる。

 そんなに釣り合ってないの?俺たち……。

 俺ってそこまで酷い顔だったのか………。


 そうやって1人で落ちこんでると、冬華がバシバシと肩を叩いて来た。


「あんまり気にしない方がいいよー、アタシが可愛いくて、美しすぎるだけで、夏樹が酷いお顔って訳じゃないからね」

「お、おう、そうか……。ありがとう」


 ありがとう?これは励まされて居るのだろうか?自分で自分の事褒めているだけじゃなかろうか。

 まぁ、実際冬華は可愛いし、俺もイケメンではないからな。


 その後もずっとジロジロと見られたり、笑われたりしたけど何とか学校に着いた。

 冬華とはクラスが違うから教室前で別れたけど、学校まで一緒に来ていたらそれはもう話のネタにされること間違い無しだ。


 教室に入るや否や、俺が唯一友と呼べる仲の奴が話しかけてきた。名前は東條とうじょう 暖翔はると、冬華よりも少し明るめのトーンで茶髪に染めており、1年でサッカー部次期エース候補の実力も兼ね備えており、勉学の方も申し分のない、完璧超人だ。

 ………もちろんイケメンである。


「おはよう夏樹、朝からお熱だったようだねぇ」


 と、ニヤニヤとしながら近寄ってくる。

 クラスの奴らも気になってはいるが、喋り掛けに来るほどでもないらしく、俺と暖翔の話に耳を傾けている程度だ。


「そんなんじゃねぇよ。断じて暖翔が思っているような仲ではない」

「本当に?どうせあれでしょ、今までは控えてたけど、彼女の藍莉あいりちゃんとイチャイチャしながら登校して来たんだろ?」


 藍莉――、俺の彼女の事だ。

 川原かわはら 藍莉あいり、先日俺が浮気されていた事が発覚した数ヶ月前から付き合っていた彼女だ。

 俺は女慣れしてる暖翔に相談とかする為にも藍莉と付き合っていることを暖翔にだけは言っていたのだ。

 他の誰にも言っていないから、クラスの奴らはしらないだろうけどな。

 今の関係上俺が女子生徒と登校して来たとなると、暖翔は相手が藍莉と思った訳だが、違う人だとはとても言いづらいな………。


「……それがな、ちょっと話したい事があるから昼休みいいか?」

「……?わかった、じゃあ空けとくね」


 昼休みの約束をして、俺は自分の席に着いた。

 幸い藍莉ともクラスが違ったから、居心地が悪くなる訳じゃ無かったし、冬華のおかげもあってか、意外と授業に集中して取り組む事が出来た。





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