第7話

 そのときは結局毅くんがもう一つ皿におかれたピーマンを食べた。

 ところが、である。

 翌日妙子さんと私で庭の掃除をしていたとき、食堂の調理室の前に出されたゴミ箱を見て唖然とした。そこには、新鮮なピーマンがごっそりと捨ててあったのだ。冷蔵庫から取ってきたに違いない。

「あちゃー」と妙子さんは天を仰いだ。

 私は本気で腹が立った。

「ちょっと毅くんのところに行ってくる。叱ってくる」

 そういって走りだそうとする私の腕を妙子さんはつかんだ。

「𠮟っちゃだめ」

「何で。悪いことは悪いって教えないと」

「その怒り、毅くんのための怒り?」

 はっとして妙子さんの顔を見た。

「自分の怒りでしょう? それではダメ。あくまで彼のために怒るものでないと、今の彼は受け付けられない。エスカレートするだけよ」

 私は混乱しながら考える。

「子どもは大人が思っているよりずっとずっと敏感で鋭いのよ」

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