第5話

「私が思うに」と妙子さんは言う。

「私は子どもたちに、『自分は愛されてもいい存在なんだ』と感じてもらうの」

 はっとした。

 私は、いまだに「自分は愛されてもいい存在なんだ」と思っているだろうか。愛情に満ちた夫の愛を私はどこか受け入れることができずに、心の穴を抱えている。

 虐待を受けていた子どもは、それでも親を恨まず、『自分が悪いからだ』と思い込んでいると聞く。必死に親をかばうという。

 もちろん成長するにしたがって、親を恨むことになっていくのだけれど。

 親を恨んでも、それでも「自分は愛されてもいい存在なんだ」と心底思えるようになるわけではない。どこかで、「自分が悪いから」「愛されないのが当然」と思い込んでしまう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る