第4話
妙子さんはこの仕事をもう5年もやっているベテランだった。40代半ばの主婦。結婚が早かったので、息子も娘ももう学校を卒業して社会人になっているという。それで余裕ができた彼女はこの仕事をはじめたそうだ。
私たちが預かるのは施設に行く前段の子どもたちばかり。おおかたはネグレクトを含む親の虐待を受けてきた子どもたちだ。
だから、私たちは愛情を貸すプロとして、偽物の愛情を与えても行けないし、子どもに本当の親のような思いを抱かせてもいけない。本当の親のように思わせたら、施設に預けたときに、子どもは「裏切られた」と感じてしまう。
子どもが「自分は愛されていい存在なんだ」という芯を子ども自身のなかにつくり出すことが仕事だ、と妙子さんは言う。
何と難しい仕事だろう。
「美奈子ちゃん、じゃあ、養育園にいっても元気でやるのよ。笑顔を忘れないでね」
そういって彼女はこれまで面倒を見ていた6歳の少女を送りだした。美奈子ちゃんは親に暴力を振るわれていた。それなのに、今は素直に笑っている。手を振って「レンタル愛情業・ほほえみ」を出ていった。
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