第3話

 それからも私は失敗ばかり。子どもばかりあてがわれた。正直に言おう。私は子どもが好きではない。自分自身も子どもらしい子どもだったときはなかったような気がする。無邪気で元気な子どもなら扱いやすい。けれど、私が相手をしなければならないのは、そうでない子どもたちばかり。

 何より感じるのは『子どもらしくない』ということ。笑っちゃう。私自身がまったく子どもらしい子どもではなかったくせに。

 あどけなさ、邪気のなさ、無防備さ、全幅の信頼感……そういったものが欠如している幼い子どもたちばかりだった。

 演技でなく、こんな子どもたちに本当の愛情を注ぐなど、はなから無理な相談ではないか。

 ましてや私は子どもが嫌いなのだ。


 試用期間も半分を過ぎた。私はやる気をなくしていた。

 老人の担当に変えてほしいと社長に掛け合った。あっさりと却下された。子どもの心をつかめない人間に、老人だろうと何だろうと人の心がつかめるわけはない、甘く見るな、とのことだった。


 一緒に働く仲間はどうやって「愛情」を表現しているのだろう。私は観察してみることにした。

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