第173話 白狼というクラン


<ハヤト>


俺はギルドに来ていた。

少し疲れているが、問題はない。

8階層に行くにはまだ実力不足のようだ。

取りあえず掲示板を確認。

・・・

素材の依頼はいつもあるな。


掲示板を見ていると、受付の佐々木さんが近寄ってきた。

「村上さん、少しよろしいですか?」

おぉ、佐々木さん、いいプロポーションしてんな。

俺は一瞬でチェックする。

佐々木さんが軽く咳払い。

「おほん・・あのですね・・」

「は、はい!」

「白狼ってクランはご存知ですか?」

「え? あ、あぁ・・何か、このギルドで有名だったような・・年配者の多いクランだったような・・」

佐々木さんがため息まじりに答える。

「はぁ・・そんな認識なのは、村上さんだけですよ。 我がギルドのエース的なクランです」

「は、はぁ・・」

「そのクランの代表が村上さんが来たら教えてくれと言われておりまして、もしかしたら勧誘かもしれませんが、お伝えしてよろしいですか?」

「え? 俺を勧誘? い、いや、俺はソロで動きたいし・・」

「はい、存じております。 我々もクランの言葉は無下にできませんから、一応お伝えしているだけです。 直接会ってお話を聞くくらいはしてもらえませんか? お一人で不安でしたら、我々ギルドの職員が同席いたします」

佐々木さんが丁寧に教えてくれる。

なるほど・・佐々木さんや日置さんにも世話になってるしな、ギルドの顔をつぶすわけにもいくまい。

どうせ暇だし。


「いいですよ、会って話を聞くくらいは問題ありません」

俺は軽く返事をする。

「そうですか、よかったぁ。 ありがとうございます。 では早速連絡入れますね」

佐々木さんはそういうと、足早に受付に戻っていく。

1分くらいすると、佐々木さんがまた戻ってきた。

早いな。

「村上さん、白狼の代表の方が間もなく来られますので、ここでお待ちいただいてもよろしいですか?」

「え、えぇ・・」

俺は対応の早さに驚いていた。


また1分くらいすると、ギルドの入り口から白を基調としたスラッとした紳士が入ってきた。

ギルドの中が一瞬で静かになる。

「お、おい・・あれって白狼のリーダーだぞ」

「珍しいこともあるものだな・・」

「このギルド最強の猛者ぞろいだが、紳士ばかりだしな」

「おじさま・・」

・・・

・・

この空間にいる冒険者たちは一瞬の静寂から、ザワザワとした雰囲気になっていた。


白を基調とした紳士は、受付へ行くと佐々木さんと話していた。

佐々木さんが手で俺を指し示すと、紳士が俺の方を見てゆっくりとうなずく。

俺もうなずくと、微笑みながら近づいて来た。


「初めまして、白狼というクランのリーダーをやっている常盤ときわと申します。 よろしくお願いします。 村上さんでしたな・・あちらで少し時間をいただいてもよろしいかな?」

常盤と名乗った紳士は、ギルドの一室を指し示す。

俺は常盤さんに先導され、その部屋に入る。

佐々木さんがいた。

「常盤様、私も同席した方がよろしいですか?」

佐々木さんがまず言葉を出していた。

「ふむ・・私としてはどちらでも構わないが、村上さんはどうかね?」

「え、えぇ、私も佐々木さんにいてもらった方が緊張しないですみそうです」

「なるほど・・では、佐々木さん、よろしくお願いします」

「かしこまりました」

佐々木さんは笑顔でお辞儀をすると、俺たちと少し距離を取り席に着く。


俺は常盤さんと向かい合わせに座る。

「村上さん、まずは私たちの要望に応えてくれて礼を言う。 ありがとう」

常盤さんが頭を下げる。

「い、いえ・・何か、私と面会したいと聞きましたので、会うだけならと思っただけです」

「フフ・・そう緊張しないでもらいたい。 単刀直入に言わせてもらおう。 我々のクランに入る気はないかね?」

常盤さんが直球で聞いてきた。

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