第172話 無事に帰還


「アマテラス様、もし私にそういったものがあったのなら、どうなっていました?」

俺は聞かずにいられない。

「うむ、誰でも持っておるものだが、イコルの逆鱗に触れたのなら、生きてはおるまい」

「・・・」

俺は、まともに育ててくれたことを両親に感謝した。

・・・

・・

しばらくの間、俺はアマテラス様と会話する。


イコルが帰ってきた。

「この空間は良いところだな」

「はい、俺が初めに到達したときに、神様がいたところです」

俺の言葉にイコルがグッと俺に近寄ってくる。

「神だと?」

・・・

あの、怖いんですけど。

「え、えぇ・・その・・管理者とか言ってました」

「おぉ、なるほどな。 後は我が使わせてもらって問題あるまい」

イコルがうなずく。

「イコルよ、我の地区で無茶をするでないぞ。 我も忙しいのだ」

「わかっておる。 それで、ハヤトよ。 お主はここで我と遊んでくれるのか?」

「「え?」」

俺とアマテラス様が同時に反応する。


「イコルよ、今我は言ったよな。 我の地区で無茶をするなと」

「無茶ではあるまい。 ハヤトに聞いておるのだ」

バッとアマテラス様が俺を見つめる。

その目から殺人光線でも出るんじゃないかという眼力だ。

「い、いえ・・私は、地上に自分の家があるので、そこで生活しなければなりません」

俺は事実を述べる。

「ふむ・・そうか、それはそうだな」

イコルはあっさりと納得する。

俺は思わず拍子抜けした。

何か妙に寂しそうな感じがする。

「あ、でも・・」

俺が言葉を出すと、ホッとしていたアマテラス様がキッと俺を睨む。


「でも・・なんじゃ?」

イコルがまっすぐな目で俺を見つめる。

な、なんてきれいな目なんだ。

「え、えっと・・たまに遊びに来てもいいですか?」

俺の口から思わず言葉が出た。

アマテラス様が目をギュッと閉じて片手で目を抑える。

イコルがにっこりとして、

「おぉ、それは楽しみだな。 いつでも来い」


アマテラス様に睨まれながら、俺はイコルに挨拶をして7階層を後にした。

俺はアマテラス様と共に帰還する。


「おかえりなさいませ、アマテラス様」

巫女風の服を着たウズメだったっけ?

その子が出迎えてくれた。

「おや? アマテラス様、ハヤトさんもお連れになったのですか?」

アマテラスは何も言わずに自分の椅子に向かい座った。

「何やらお疲れのようですね、大丈夫ですか?」

「ウズメよ・・これが大丈夫に見えたのなら、お主はクビじゃ」

「い、いえ・・お疲れのご様子。 お飲み物をお持ちいたしましょう」

ウズメがそそくさと部屋を出ていき、すぐに帰ってきた。

「アマテラス様、どうぞ」

ウズメがお盆に飲み物を乗せて差し出す。

アマテラスが一口飲む。


「うむ・・これは・・桃か」

「はい、アマテラス様のお好きな桃でございます」

「そうか・・少し落ち着いたぞ」

「それは何よりです」

ウズメもホッとしたようだ。

俺もそろそろ家に帰ろうかと思った。

「ハヤトよ、お主に疲れておるのだ。 何を帰ろうとしておる。 説教じゃ」

・・・

・・

俺はこってり絞られた。

ただ、いろいろと情報をもらった。

審判者と呼ばれるアマテラスやイコルの前では、俺たちの持つスキルに制限がかかるようだ。

そして、俺に余計なことはしゃべらないようにと、くぎを刺された。

俺も深く反省。


とにかく、俺は無事に帰還できた。


<アマテラス>


ハヤトが帰った後でウズメに愚痴をこぼす。

「アマテラス様、本当にお疲れのご様子です」

「うむ、天然というか子供というか、あのハヤト・・それよりもイコルの存在じゃ」

「え? イコル様とおっしゃると・・あのヴァンパイアのイコル様ですか?」

ウズメが驚いている。

「そうじゃ。 自分の住んでいたところを放棄したところを見ると、どうやら本気のようだな」

「やはり階層の争いになりますか?」

ウズメが慎重に聞く。

「うむ、爬虫類と人種、あるいはどちらも滅ぶか・・」

ウズメは黙ってアマテラスを見つめていた。


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