第141話 ジョーの怒り


「ふ~む・・じゃ、おいらは・・このメスをいただこうかな。 いや、あっちの黒い髪がいいや」

直後、日置さんの周りでパリンッという音がなる。

「ん? あの女、威嚇が通じないぞ、どういうことだ?」

「は? そんなはずがあるかよ、どれ」

横の爬虫類が同じように日置さんを睨む。

パリンッ!

やはり、何かガラスが割れるような音がした。

「ムッ! あのメス、妙なスキルを持っているのかもな。 だが、所詮はエサだ」

爬虫類たちが話をしていると、ダグラスが言葉を出す。

「お前たち、あまり人を舐めない方がいいぞ。 こいつらは先程ケンタウルスを倒したのだから」

「なに? あのバカ馬をか?」

「ってことは、結構強いのか? 面倒くさいな」

ダグラスの仲間たちが俺たちを見つめる。


「うぐ・・」

「キャ・・」

ジョーとサラが軽くうめき声をあげた。

・・・

「おいおい・・こっちのエサどもも、俺たちの威嚇が効かないぞ」

「あぁ、先程も阻害された。 全く・・この新しいシステムのおかげで、俺たちの自由が制限されるぜ。 やってくれるよ」

「まぁそういうな。 これほど快適な環境は、そんなに多くない」

「ふぅ・・仕方ないな」

ダグラスの仲間たちがやれやれといった感じでつぶやく。

!!

直後、ダグラスを警護していたSPたちが、爬虫類種の2匹に襲われていた。


一瞬で首と胴体を切断され、足を持って逆さに吊るされる。

ちょうど、鶏の血抜きのような格好になっていた。

片手でSPの胴体を持ち、傍の木に引っ掛ける。

爬虫類種は、当たり前のような動作で行っていた。

・・・

ジョーとサラ、マリアは身体を震わせながらダグラスの方をゆっくりとみる。

俺も動けなかった・・というより、日置さんの様子をうかがっていた。

「あいつら・・」


「ほ、補佐官殿・・いや、ダグラス・・貴様は」

ジョーが明らかに怒りに震えている。

「おやおや、英雄殿は肉がお嫌いですかな?」

ダグラスが淡々と答える。

「人では・・ないのだな。 それならば・・」

ジョーがゆっくりと立ち上がる。

穴の開いたロングソードを担ぐ。


「おいおい・・この下等種・・もしかして、俺たちと戦おうっていうんじゃないだろうな?」

「アハハ・・この新しいシステムの影響か? エサがもしかして俺たちと戦えるとでも思っているのか?」

「クックック・・何か、妙にかわいい感じがするな」

ダグラスの仲間たちは、まるで小動物がじゃれてくるように俺たちを扱う。

「だが・・教育が必要だな」

「アハハ・・教育って、そいつらエサだぞ。 すぐに肉になる」

「ププ・・お前、熱くなり過ぎだ」

爬虫類系たちは余裕で会話をしていた。

ジョーがロングソードを担ぎ、ダグラスの方へ近づいていく。

「ダグラス・・貴様は、我々アメリカ国民を騙していたのだな」

ジョーは怒りに包まれていた。

俺のいるところでも感じれるほどだ。

そして、ジョーの身体がうっすらと光に包まれる。


「こいつは、俺がやる」

爬虫類系の中の一人がジョーの前に立つ。

「エサの分際で、高等種族たる我々に対峙してもらえるのだ。 ありがたく・・」

爬虫類系の一人がしゃべっている途中だった。

ジョーがロングソードを地面に刺し、右腕を前に差し出していた。

ジョーの右腕の手のひらのところに黒く渦巻く何かが見る。

その黒いものが爬虫類系に触れた瞬間、爬虫類系の上半身の左半分が消失していた。

半身を失った爬虫類系がその場で片膝をつく。

!!

「お、おい!」

「何が起こったんだ?」

ダグラスも驚いているようだ。

「ジョー・・なるほど、ケンタウルスが勝てないわけだ」

「おいダグラス、こんな人間がいるなんて聞いてないぞ」

「いや、俺は先程、気を付けろといった」

「だからといって、人間ごときが我々に抵抗できるなどと・・」

ダグラス以外の爬虫類系が動揺していた。

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