第140話 仲間


「来るぞ、用心しろ!」

ジョーはそう叫ぶと、ロングソードを構えた。

光る左腕が出現し、両手でロングソードを持つ。

「ほう、ジョーのやつ、なかなかやるな・・ケンタウルスが勝てないわけだ」

補佐官がつぶやいていた。

迫ってくる馬は完全に目視できる。

角が生えた馬の形をしている。

俺は瞬時にユニコーンという言葉が浮かぶ。

ただ、色は濃い紫色だが。


ユニコーンはジョーの横にいるサラに向かっていた。

ジョーがロングソードを振るう。

ガキーン!

ユニコーンが角でロングソードを弾く。

そのまま角をジョーに突き出してくる。

ジョーはロングソードで回避する。

ギュルル・・・。

ジョーのロングソードに丸い穴が開いていた。

「な、なんだ?」

ジョーは距離を取る。


ユニコーンはジョーなど気にすることなく、サラの方を向いた。

身体をブルブルと振るわせると、サラに向けて角を突き出す。

ギュルル・・。

何やら、角の周りに竜巻のような気流が発生しているようだ。

俺が思わず飛び出そうとすると、ダグラスが金色の槍でユニコーンの角を防いでいた。

ガン!!

「ふん! 幻獣風情が・・」

ダグラスが面倒くさそうにつぶやく。

ユニコーンは角の攻撃を弾かれ、首が軽く跳ね上がる。

ズボ・・。

ユニコーンの首に、金色の槍が突き刺さっていた。

ダグラスはその槍を引き抜き、ユニコーンの首の根元を切断する。

ズバン!


「ベスタさん、あのおっさん、結構強いですよ」

『ハヤト様の敵ではありません』

「あのね・・そんなこと・・」

『ハヤト様、それよりもあの男の仲間でしょうか、接近しております』

「え?」

俺がベスタと会話していると、前方向からまたもユニコーンが迫って来ていた。

今度は3体いるようだ。


「く、くそ・・なんてことだ」

ジョーが穴の開いたロングソードを地面に置き、サラの前に立つ。

マリアも銃で狙うのをやめ、その場に立ちつくしていた。

俺は日置さんのところへ近づいていく。

「む、村上さん、あの魔物が・・3体も・・」

「あぁ、だが大丈夫だ。 あのアメリカの補佐官も強いし、俺が君だけでも守るよ」

「え?」

日置さんが驚いていた。

「い、いや・・その・・変な意味じゃないんだ。 あの・・その・・仲間だから」

俺は年甲斐もなく焦ってしまった。

日置さんは顔を赤らめて下を向いている。


「さてと・・近づいてくる魔物からやるしかないな」

俺は身体に気合を込めようとした。

!!

突然、ユニコーンのところに稲妻のような衝撃音が走る。

ドォーーーン!!

音と同時に土ぼこりが舞い上がる。

3体同時にだ。


ユニコーンは接近してこない。

「何が起こったんだ?」

『あの男の仲間と思われます』

「仲間?」

『はい』

ベスタが教えてくれた。

チラッと日置さんを見ると、日置さんもうなずいている。

なるほど・・ベスタの情報は日置さんも得ているわけか。


土ぼこりの前に人らしきフォルムが見える。

それがゆっくりとこちらに近づいてきた。

「よぉ、ダグラスだっけ? 俺たちを呼び出していったいなんだよ?」

「ん? そいつらはエサか?」

「そうですよ、全く・・コロニーでくつろいでいたのに、こんな埃っぽい場所に呼び出すなんて」

3人? 3匹? が、槍と剣を持って俺たちの前に現れた。

・・・

なるほど、間違いなく人間ではない。

全身、赤や青の鱗状のものでおおわれている。

ワニのようなトカゲのような顔つきだ。

眼は完全に爬虫類だな。


ダグラスが笑いながら前に出る。

「いや、すまないな。 だがこうやってエサを運んできたんだ。 許してくれ」

ダグラスが金色の槍を肩に担いでいた。

爬虫類たちがニヤニヤしながら俺たちを見る。

「まぁ、特別なおやつと思えばいいか。 コロニーには知られてないしな」

「うむ、俺たちだけのお茶会だ」

「そうそう」


ジョーが不安そうな顔でダグラスに話しかける。

「ほ、補佐官殿・・これはいったい・・」

ダグラスがゆっくりとジョーの方へ振り返る。

!!

そこには人間の顔はなかった。

「ふむ・・君たちは、ここで我々の食材になるのだ。 ま、どのみち、この階層の魔物と戦えるはずもあるまい」

ダグラスのそばに仲間が近寄る。

「俺は・・あのメスがいいな」

サラの方を見た。

サラがビクッと身体を震わせる。

「俺は・・このオスが歯ごたえがありそうだ」

ダグラスについてきていたSPを見つめる。

SPたちはそれだけで硬直して動けなくなった。

どうやら何かのスキルをつかっているらしい。

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