第138話 ド天然?
<ハヤト>
俺は日置さんと一緒に休憩をしていた。
あの戦闘のことでいろいろと尋問を受けている。
「村上さん、あの魔物の弱点というか、圧勝でしたね」
日置さん、なんか活き活きしてるよな。
「う、うん・・何というか、俺の気合みたいなものを拳に込めると、力なんかが強化されるんだ。 それで殴ったら効果があったようだし・・」
「それも村上さんのスキルですよね? あ、そうそう、6階層に到達したときに、あの敵を既に把握されてましたよね? アメリカの人たちは気付かなかったようですが・・」
「う、うん・・でも、まさかいきなり攻撃を仕掛けてくるとは思ってなかったよ。 ジョーたちは気付いてなかったようだから、つい前に出てしまったけどね」
日置さんは目を大きくして俺の話を聞いている。
「私も気づいていたのですが、村上さんと同じです。 まさか私たちに合わせて攻撃してくるなんて思ってもなかったです」
「日置さんも、気づいていたのかい?」
「はい」
なるほど、日置さんの索敵能力は相当なものみたいだな。
「それと村上さん、あのケンタウルスという魔物ですが、話されていたような種族ではないですね。 ドラコニアンとか爬虫類系とは違いますね」
「うん、そうなんだよ。 日本にはいない・・いや、違う形でいるのかもしれない」
「違う形?」
日置さんが不思議そうな顔で俺を見る。
俺は少しドキッとする。
「う、うん・・俺が初めに入ったダンジョンに、天狗みたいな小さな魔物がいたんだ。 そういった亜種みたいなものじゃないかな? なんていうのか、文化が違えば神話も違うでしょ? そんな神話にある魔物みたいだから・・」
俺も正確にわかるわけはない。
「なるほど・・神話ですか・・う~む・・」
日置さんはこういった話が好きなのか、真剣に考えているようだ。
・・・
・・
「村上さん、人間って創られた存在って言ってましたよね?」
「うん、人間だけじゃなく、この世界も仮想現実かもしれないらしいし・・」
「はい、でも私たちはその与えられた世界で生きていかなければいけない」
「うん」
「その・・地球の内部・・ダンジョンの深いところに、その最強種たるドラコニアンがいるし、爬虫類系のような人を捕食するタイプの種族もいる。 それらが、実験的にケンタウルスみたいな種族を生み出して、自分たちの環境を守ろうとしているというか、バッファ地帯のような緩衝地帯に放っているというか・・そんな考えってアリですかね?」
「なるほど・・」
この子はかなり賢いな。
日置さんの言葉に俺も真剣に考えてしまった。
確かに、人が迷い込んで自分たちの住む世界に来たりしても迷惑だろう。
都市伝説なんかでは、人が地底世界を見てきたなんて話もある。
気まぐれで自分たちの存在を見せてみたりしているのかもしれない。
それが世界システムが変わってしまった。
捕食対象が力をつけ始めた。
いろいろと今までにない変化が起こっているのかもしれない。
俺も日置さんも考え込んでいると、ドアをノックする音が聞こえた。
コンコン・・。
俺がドアまで行き、ドアを開く。
「やぁ、ミスタームラカミ」
ジョーが微笑んで立っていた。
「ジョー、体調は問題ないのですか?」
「うん、全く問題ないね。 だから問題が起きた」
「え?」
俺は、取りあえずジョーに中に入ってもらう。
「ミス日置、お邪魔するよ。 ん? ミスタームラカミ、ミス日置と良い仲なのかな?」
ジョーが平然と聞いてくる。
「は?」
「え?」
ジョー、いったい何を言っているんだ?
「アハハ・・ジョー、俺たちは反省会をしていたのですよ」
「なるほど。 ん? どうしたんだミス日置・・顔が真っ赤になっているが、どこか調子でも悪いのか?」
ジョーが日置さんの顔を覗き込む。
日置さんの顔がますます赤くなってきた。
日置さんがいきなり席を立ち、そのまま部屋を飛び出していった。
「あれ? どうしたんだ、ミス日置は?」
・・・
なるほど、ジョーはド天然なようだ。
「ジョー、日置さんは驚いたのだと思いますよ」
「驚いた?」
「はい。 俺と良い仲と言われたのが衝撃だったのでしょう」
「なるほど・・それは悪いことをしたね。 後で謝っておくよ。 それよりもミスタームラカミ、今からケンタウルスのいたダンジョンに向かうのだが・・」
・・・
・・
ジョーが補佐官の要請で、ダンの冥福とダンジョンの調査に向かわなければならないという。
補佐官も同行するらしいが、あまりにも急な行動なので俺たちの状態を確認しに来たらしい。
「俺は何も問題ありませんよ。 日置さんも大丈夫じゃないですかね?」
俺は軽く返答した。
「そうかい、それは助かるよ。 では1時間後に出発ということでいいだろうか? 何か僕たちに時間を与えたくないみたいなんだ。 よろしく頼むよ」
ジョーはそういうと自分のところへ戻っていく。
後で聞くと、通路で日置さんと出会い、きちんと謝罪したそうだ。
さすがイケメンだな、サラやマリアにモテるわけだ・・チキショー!
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます