第137話 補佐官の要求


ジョーたちは応接室でくつろいでいた。

そんな中、ダグラスが颯爽と入ってくる。

「いや、ご苦労だったね。 全員無事と聞いてホッとしているよ。 あの魔物・・やはり相当手強いようだな。 だが、申し訳ないがすぐにでも向かってもらわねばならない。 何せ、今後の脅威を取り除きたいのだ。 武器はどれを使ってもらっても構わない・・」

ダグラスがペラペラとしゃべっていると、妙な雰囲気に気が付いた。

ジョーたちが不思議そうな顔でダグラスを見つめているからだ。

「・・ん? どうしたんだ君たち?」

ダグラスの言葉にジョーが報告をする。

「補佐官・・我々はケンタウルスを討伐してきたのです」

・・・

ダグラスは耳を疑った。

今、何と言った?

討伐と言ったのか?


「な、なんだと・・討伐? あのケンタウルスを討伐したのか?」

ダグラスはまるで知っているかのような口調だ。

「その通りですが・・補佐官、ケンタウルスを見たことがあるのですか?」

ジョーが聞き返す。

「い、いや・・見たことはないが、報告をまとめると凄まじい戦闘能力の魔物だとわかるからな」

「そうですか・・」

「う、うむ・・さすが、アメリカのヒーローだな。 よくやってくれた。 ゆっくりと休んでくれたまえ」

ジョーは軽く微笑むと席を立ち、応接室を後にする。

サラたちも一緒に出て行った。


帰還中、俺が頼み込んだ。

どうか、俺が倒したということは内密にしてくれたと。

俺の強さがバレるのは困るということを説明。

日本では自分の力を誇示するのは嫌われるからだとか、いろいろと必死で説得。

ジョーたちは笑いながらも受け入れてくれた。

それぞれの文化の違いだね、ということで落ち着いた。

ありがたい。


<ダグラス>


わからぬ。

ジョーの強さはそれほどなのか?

それとも、マリアの力か?

日本からのスペアコマンダーの力ということはあるまい。

どうみても数合わせの連中だ。

何か不測な事態が発生したのか?

・・・

いや、あのサラという女。

ジョーのために自分のすべてを捧げている感じだった。

その2人の相乗効果で予想外の力があったのかもしれぬ。

その時にマリアと日本のコマンダーが加勢したのかもしれない。

それならば、いくらケンタウルスといえども危ういな。

とにかく早急に人間の力の増強を抑えねばならない。

やはり・・。


ダグラスは携帯のようなものを取り出していた。


<ジョー>


ジョーとサラ、マリアとで反省会をしていた。

「それにしても、あのムラカミという男・・普通ではない。 いくらスキルがあるからといって、あの動きは僕でも把握できないよ。 おそらくレベル32というのも違うだろう」

ジョーが両手を重ね、その上に顎を置いて話していた。

「マイヒーロー、私もそう思います。 だからこそ自分の功績を秘密にしてくれということでしょう。 私たちもそれを口外することはないですが・・」

「マリアはどう思う?」

ジョーがマリアに聞く。

「えぇ、私もそう思います。 彼の強さはスキルだけではないと思います」

マリアが答えていた時だ、ドアをノックする音が聞こえる。


コンコン・・。

「どうぞ」

ジョーの声に、ドアが開いた。

ダグラスが立っていた。

「これは補佐官殿、どうされたのですか?」

「休んでいるところを申し訳ない、体調はどうかね?」

「えぇ、問題ありません。 サラに回復させてもらいましたから」

ジョーの回答にダグラスはうなずく。

なるほど・・私の想像通りだな。

この2人で力を合わせたのだろう。


「ジョー、もし可能ならばだが、私をケンタウルスを倒した現場に連れて行ってもらえないだろうか?」

「「え?」」

ジョーとサラが同時に顔を見合わせる。

「ほ、補佐官・・いくらケンタウルスがいなくなったからといっても、調査をしなければ危険な状態であることは間違いありません」

「うむ、それはわかっている。 確かに、どうして他のダンジョンで出現しないような魔物が現れたのか、それの調査は必須だが、私の失策でダンが亡くなった場所だ。 どうしても行ってみたいのだよ」

ダグラスが言葉を並べる。

ジョーもダンの名前を出されれば、無下に断るわけにもいかない。


少しの間考えていたが、サラを見てうなずく。

「わかりました。 ですが、我々だけではなく、日本の戦士たちも同行していただきますが、よろしいですか?」

ダグラスはうなずいた。

ふむ・・やはりそうか。

奴らもジョーのアシストをしたのだな。

「うむ、よろしく頼むよ」

「では補佐官殿、準備が整いましたら、ご連絡いたします」

ジョーの言葉を聞き、ダグラスは事務所へと戻っていく。


ダグラスが帰ると、サラが口を開く。

「マイヒーロー、補佐官のお考えがよく見えませんが、どう思われます?」

「うむ・・僕もよく理解できないのだが、何か焦っているような感じを受けたね」

「焦っている感じ・・わかりませんね。 ケンタウルスは討伐できたのに、何を焦る必要があるのでしょうか。 でも・・私たちの帰還を喜んでいる感じはありませんでしたね」

サラの言葉にジョーは微笑む。

「さて、ミスタームラカミたちに連絡しないと」


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