第130話 評価
<アメリカ>
日本の政府専用機が到着した。
航空機にタラップが横づけされる。
俺と日置さんは十分に休息することができた。
移動中は何も干渉されることなく、おいしい食事が提供されただけだ。
外に出るときに、また自衛官に敬礼される。
俺にそんな挨拶は要らないから。
「あ、ありがとうございました」
一応声をかけてタラップを降りていく。
タラップの下にリムジンだろうか、黒塗りの長い車が3台止まっていた。
パリッとしたスーツを着た男が立っている。
その近くにガタイの良い男が3人、周囲を警戒していた。
SPなのだろうな。
スーツを着た男が営業スマイルで俺たちを出迎える。
「ようこそアメリカへ。 そして、我々の要請に応えてくれてありがとう」
そう言いつつ握手を求めてきた。
俺も素直に握手を返す。
!
ん?
なんだ、この感覚・・。
俺は妙な違和感を覚える。
「どうぞこちらへ」
スーツを着た男が車のドアを開けてくれた。
俺たちはそのまま車に乗る。
・・・
・・
スーツを着た男がいろいろと説明してくれた。
そして、大統領補佐官という役職にいることも教えてくれる。
俺は緊張してしまった。
そんな偉いさんに車のドアを開けてもらったのか?
俺のチキンハートはド緊張だ。
「ハハハ・・ミスタームラカミ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。 もっと楽に接してください」
補佐官が笑顔で気遣ってくれる。
「は、はい・・えっと、ダグラス補佐官、それで我々はジョーと一緒にそのダンジョンの調査に向かえばよいのですね」
「はい、そうしてもらえると嬉しい限りです。 前の調査ではジョーが動きませんでした。 我々の落ち度でもあるのですが、戦力が足りなかったようです。 ですが、盟友の日本からの精鋭2名に来ていただきました。 ジョーも加えるとなると、世界最高水準の部隊になると思っております。 ミスタームラカミ、よろしくお願いします」
・・・
・・
大統領補佐官、ダグラスが終始営業スマイルで話していた。
車が到着し、俺たちの宿泊施設に案内してくれる。
補佐官は事務作業があるらしく、車を降りたところで分かれた。
◇
<ダグラス>
ダグラスは1人ソファーに腰かけて大きく深呼吸をする。
「ふぅ・・これで駒はそろったわけだ。 調査に成功してもいいし、失敗しても良い。 それにしても日本から来たコマンダー・・妙な雰囲気を持っていたな。 全然戦闘能力が高そうに見えないのだが、あの握手した時の深い湖に沈むような感覚・・何だったのだろうか。 日本には最低でもレベル30の人間を要請していたが、まさかそのレベルに到達していないのか?」
ダグラスは一口飲み物を飲むと、また考える。
「今回はジョーも出る確約も得た。 それに欧州の女もいる。 フフフ・・ケンタウルスか・・奴も今度ばかりは手を焼くだろう」
ダグラスは深くソファーに背中を預けて目を閉じた。
◇
<ハヤト>
俺と日置さんは荷物を置いて、すぐにジョーのところへと移動のようだ。
ほとんど休憩はない。
お客さん扱いではないようだ。
航空機で十分に休憩できたので問題はないが、なんか雑な扱いに思える。
「日置さん、身体はしんどくない?」
俺は一応聞いてみた。
「は、はい、問題ありません」
「そう、それは何より」
日置さんは相変わらず緊張しているようだ。
俺たちはまた黒塗りの車に乗る。
◇
<ジョーのところ>
ジョーとサラが事務所でいろいろと話していた。
マリアはジョーのところに入り浸っている。
大統領補佐官は何も言わず、行動にも制限はかけていない。
「マリア、ちょうどよかったわ」
サラが笑顔で出迎える。
「どうしたの?」
「うん、間もなく日本からのスペアコマンダーが到着するって連絡があったのよ」
「そう」
「そう・・って、反応薄いわね」
サラが微笑む。
「う~ん・・だって、ジョーがいれば十分じゃない? 足手まといにならなければいいのだけれど・・ね」
「フフ・・私は一応出迎えの準備をしなきゃ」
サラはテキパキと作業をこなしていく。
しばらくすると、事務室に連絡があった。
日本からのスペアコマンダーが到着したという。
「ジョー、着いたようです」
サラがジョーの方を向く。
「うむ、これで完全にダンジョンに向かわねばならないことになったな。 そして、即座に出発だろう」
「はい」
事務室のドアが開かれた。
マリアが入り口のところを注視。
ホークアイでハヤトとヤマトを捉える。
・・・
・・
「ふむ・・本当に大丈夫なの? ジョーのようにビリビリ来る感じはしないわね。 それほど強そうでもなさそうだし・・東洋人だからかしら?」
マリアは即座に評価をつけていた。
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