第128話 それって、セクハラだから


<〇〇ダンジョン>


ヒロと呼ばれる爬虫類系種族たちのコロニー。

食料は保存室に保管された。

「おい・・えっと・・ヒロでいいな」

「あぁ、呼称などどうでもいい。 この世界の呼び名で十分だ」

「そうか・・ヒロ、お前の言っていた地上人な、元老会には報告したそうだぞ」

「だろうな・・そして、結果も同じだろう」

「フフ・・まぁな・・所詮は家畜という話だ」

「想像通りだが、本当に強くなっていたぞ」

ヒロが苦笑いをしながら答える。

「まぁ、俺も見たわけじゃないし、今回も食料調達には成功している。 それにヒロはきちんと奴等の社会システムから外れた者を選んでいるのだろう?」

「当然だ・・時間はかかるが・・」

ヒロは答えながらも、反論はしない。

いつものことだ。


「あぁ・・そういえば、俺の他にも調達班はいるはずだが、獣人たちの方はどうなっている?」

「・・・」

相手が即答しないことにヒロが不思議そうな顔を向ける。

「実はな・・奴等のところにガーディアンがいるらしい」

「ガーディアン?」

「そうだ。 ブルーチームの連中がやられたという話だ」

!!

ヒロは驚き、すぐに言葉が出てこなかった。

「まさか・・あの集団は上位アタッカーのはずだ。 たかが獣人ごときにやられるはずもあるまい。 戦士の肉食獣系すらも相手にならないだろうに・・耳長族が協力でもしているのか?」

「いや、耳長族の目撃例はないのだが・・」

何やら言葉にしづらそうだ。

「どうしたんだ?」

ヒロが再度尋ねてみる。

「あぁ・・これは聞いた話だ。 俺も実際に見たわけじゃない。 ガーディアンらしきものがいるという話だけなんだ。 ただな・・その存在を探ろうと調査隊を派遣すると、その生命反応が消える。 それでブルーチームが派遣されたが、それすらも消えたそうだ」

「ほんとかよ・・それってヤバい状況じゃねぇのかよ」

「元老院にも報告は届いている。 ただ、動こうとはしないんだ。 獣人の地区に近寄らなければ問題はないし、向こうから侵略してくる気配もないからな」

「そんないい加減な・・というより、派手に動き回ってドラコニアンに目でもつけられたら・・か」

「そういうことだろう」

ヒロの言葉を聞きながら、お互いにあきらめたような表情になっていた。


「それに、人工肉でも需要は満たせるしな」

ヒロはその言葉を聞きながら笑って答える。

「それを言うなら、人種族を狩って来る必要もないだろうに・・フフ」

「まぁな・・俺たちはどちらでもよいのだが、元老院たちにこだわりがあるのだろう・・知らんけど」

「ハハハ・・知らんけど・・か。 そりゃそうだろうな」

ヒロたちは保管庫を後にした。


<内閣調査隊>


楠木班長が坂口団長のところに現れた。

「これは珍しい・・楠木さん、どうしたのですか?」

坂口が笑顔で出迎える。

「こんにちは、坂口君、少し時間ある?」

「えぇ、大丈夫ですよ」

楠木班長は坂口団長と応接室に入っていく。


「工藤、楠木班長が突然来るなんて珍しいな」

「うん、何かあったのかな?」

「オーガキングの亜種とか出たのかな?」

「まさか・・私たちのチームですら遭遇してないよ。 う~ん・・でも、何か新しい素材でも手に入ったのかも」

「やっぱり? それにしても、楠木班長・・いつみても美人だよな、スタイルもいいし・・」

河上がそこまで発言したときだった。

背中に悪寒を感じる。

殺気?

ゆっくりと振り返ると、無言でややうつむき加減の工藤がそこにいた。

河上は思わず一歩、後退あとずさる。

「く、工藤・・どう・・したんだ?」

「河上君・・私に対する嫌味なのかな? え?」

工藤がゆっくりと顔を上げ、河上を見つめる。

微笑んでいるが、殺気を纏っている。

「お、落ち着け工藤・・な、落ち着・・グボォ!!」


河上のボディに見事に肘打ちが決まっていた。

河上がゆっくりと崩れ落ち、お尻を突き出してその場に倒れる。

「河上君・・セクハラだから」

河上は背中でその声を受けるが、聞こえていたのかどうかはわからない。


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