第127話 日置さんと一緒


<ベスタとアルテミス>


ベスタ:お久しぶりですね、アルテミス様。

アルテミス:お久しぶりです、ベスタ様。

ベスタ:フフフ・・まさかご一緒できるとは思ってもみませんでした。

アルテミス:それはわたくしも同じですわ。 それよりも・・あなた様は出会ったのですね。

ベスタ:えぇ、出会いました。 我が主の運命でしょう。

アルテミス:なるほど・・まぁ、短い間ですが、お互いに主のために・・。

ベスタ:はい、主のために。


<ハヤト>


結局、空港に着くまで話すことはなかった。

・・・

かなり気まずい感じがするが、まぁ相手は学生だし、そんなものかな。

俺は勝手に納得し、取りあえず現状放置。


俺たちは車から降りる。

航空機のタラップの前まで車でつけてくれていた。

何か、とんでもない扱いを受けているようだが、考えても仕方ない。

タラップを登るところに2人立っている。

笑顔で俺たちを迎えてくれた。

「この度は、無理なご提案を受けれてくださり、ありがとうございます。 私たちは政府の渉外担当の野坂と杉田です。 村上さんと日置さんですね。 お気をつけて」

完全な営業スマイルと流暢りゅうちょうな言葉をかけられる。

「あ、はい・・どうも」

俺は軽く会釈をし、タラップを登る。

後ろの方で何やら囁いているのが聞こえるが、よくわからない。

「・・あんな・・丈夫なのかしら・・」

「さぁな・・ダメでも・・段議員が・・」

「・・私たちは・・大丈夫・・」

「・・そういうことだ・・」


航空機に入るときに、自衛官が敬礼をしてくれた。

まさか、俺たちに敬礼をしてくれるのか?

仕事人だな。

俺は会釈をすると、中に入る。

日置さんも続いて乗り込んでくる。

すぐに女性自衛官だろうか、制服を着た女の人が案内してくれた。

・・・

用があれば声をかけてくれと言って自分の業務戻っていく。

俺と日置さんは通路を挟んで座っている。


俺はこのまま気まずい雰囲気をどうにか打破したいと思っている。

何せ、ダンジョンを攻略する仲間なのだから。

「あ、あの日置さん・・」

「は、はいぃ!!」

日置さんが少し驚いたような感じで返事をする。

・・・

「俺のせいで何かぎこちない雰囲気を作ってしまったね・・ごめんね」

「い、いえ、決してそのようなことは・・」

「フフ・・ありがとう。 あのさ・・こんな話、信じてもらえないかもしれないけど、聞いてくれるかな・・」

俺はそういって、神様に出会ったこと、ドラコニアンなどの異星人の存在などを日置さんに話してみた。

・・・

・・

日置さんはしばらく言葉を出さずに、何か考えているようだ。

そりゃそうだろう。

おっさんが、中二病全開の話をしたんだからな。


「む、村上さん・・と、お呼びすればいいですか?」

「あ、あぁ、なんて呼んでくれてもいいよ」

「はい、わかりました。 村上さん・・私、その話は信じます」

・・・

俺は少し驚いた。

こんな話を受けれることができるとは。

俺は、神様と実際に出会ったから理解できるし、元々そんな都市伝説は好きだったしな。

日置さんが真剣な顔つきを俺に向ける。

結構可愛らしい子だな・・って、ロリコンじゃないぞ!


「へ、日置さん・・ほんとに信じられるの?」

「正直、完全に信用しろと言われると難しいかもしれませんが、実際にこんな変な世界になってしまいました。 何が起きても不思議ではありません」

「確かに・・」

「それに・・あの・・少しお聞きしてもよろしいですか?」

「うん」

「えっと・・言いたくなければ言わなくてもいいのですが・・その・・村上さんのスキルにナビゲーションシステムはありますか?」

「え?」

俺は少し返答が遅れる。


「あ、あぁ、あるけど・・どうかしたの?」

「あ、はい、その・・私のナビゲーションシステム、ナビさんが教えてくれたのです、何か特別なナビゲーションだとか・・」

俺は日置さんの言葉を聞いて少し驚き、ベスタに確認する。

「ベスタさん、あなたって特別なの?」

『はい、特別にあなた様仕様になっております』

「あのね・・ギャグを飛ばすところじゃないんだけど」

『いえ、ギャグなどではありません。 真実です』

「いや、俺の聞きたいのは・・」

『はい、心得ております。 おそらく彼女のナビゲーションシステムがそう言ったのでしょう。 彼女のシステムも進化して、アルテミスという名称を得ております』

「アルテミス・・ん? って、ベスタさん、どうして相手のシステムの名前がわかったの?」

『はい、私たちのシステムでは、前にお話ししたかもしれませんが、同族とはリンクできるのです』

「あ! そういえば、坂口団長の時に教えてくれたような・・忘れてた」


俺はベスタとの会話を終了し、日置さんを見つめる。

「日置さん・・今ね、俺のナビゲーションシステムに聞いてみたのだけれど、特別というより、俺仕様になっているらしいね」

「え? 村上さん仕様・・ですか?」

「うん・・って、誰でも個人仕様だよね」

俺も言葉がない。

「なるほど・・そう言われれば、誰でも特別ですね・・フフフ」

日置さんが笑っていた。

俺は初めて日置さんの緊張が解けた感じを見たのかもしれない。

少しホッとする。

とはいえ、本当に日置さんの言うように、単に個人レベルでの相違だけではないと思う。

アルテミスだったっけ?

その指摘は正しいと思う。

それに、俺と日置さんとでは、生きてきた時間が違う。

無駄に時間を過ごしたと思っていても、その重みはあるだろう。

・・・

・・

俺たちはしばらく他愛ない会話をすることができた。


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