第127話 日置さんと一緒
<ベスタとアルテミス>
ベスタ:お久しぶりですね、アルテミス様。
アルテミス:お久しぶりです、ベスタ様。
ベスタ:フフフ・・まさかご一緒できるとは思ってもみませんでした。
アルテミス:それは
ベスタ:えぇ、出会いました。 我が主の運命でしょう。
アルテミス:なるほど・・まぁ、短い間ですが、お互いに主のために・・。
ベスタ:はい、主のために。
◇
<ハヤト>
結局、空港に着くまで話すことはなかった。
・・・
かなり気まずい感じがするが、まぁ相手は学生だし、そんなものかな。
俺は勝手に納得し、取りあえず現状放置。
俺たちは車から降りる。
航空機のタラップの前まで車でつけてくれていた。
何か、とんでもない扱いを受けているようだが、考えても仕方ない。
タラップを登るところに2人立っている。
笑顔で俺たちを迎えてくれた。
「この度は、無理なご提案を受けれてくださり、ありがとうございます。 私たちは政府の渉外担当の野坂と杉田です。 村上さんと日置さんですね。 お気をつけて」
完全な営業スマイルと
「あ、はい・・どうも」
俺は軽く会釈をし、タラップを登る。
後ろの方で何やら囁いているのが聞こえるが、よくわからない。
「・・あんな・・丈夫なのかしら・・」
「さぁな・・ダメでも・・段議員が・・」
「・・私たちは・・大丈夫・・」
「・・そういうことだ・・」
航空機に入るときに、自衛官が敬礼をしてくれた。
まさか、俺たちに敬礼をしてくれるのか?
仕事人だな。
俺は会釈をすると、中に入る。
日置さんも続いて乗り込んでくる。
すぐに女性自衛官だろうか、制服を着た女の人が案内してくれた。
・・・
用があれば声をかけてくれと言って自分の業務戻っていく。
俺と日置さんは通路を挟んで座っている。
俺はこのまま気まずい雰囲気をどうにか打破したいと思っている。
何せ、ダンジョンを攻略する仲間なのだから。
「あ、あの日置さん・・」
「は、はいぃ!!」
日置さんが少し驚いたような感じで返事をする。
・・・
「俺のせいで何かぎこちない雰囲気を作ってしまったね・・ごめんね」
「い、いえ、決してそのようなことは・・」
「フフ・・ありがとう。 あのさ・・こんな話、信じてもらえないかもしれないけど、聞いてくれるかな・・」
俺はそういって、神様に出会ったこと、ドラコニアンなどの異星人の存在などを日置さんに話してみた。
・・・
・・
日置さんはしばらく言葉を出さずに、何か考えているようだ。
そりゃそうだろう。
おっさんが、中二病全開の話をしたんだからな。
「む、村上さん・・と、お呼びすればいいですか?」
「あ、あぁ、なんて呼んでくれてもいいよ」
「はい、わかりました。 村上さん・・私、その話は信じます」
・・・
俺は少し驚いた。
こんな話を受けれることができるとは。
俺は、神様と実際に出会ったから理解できるし、元々そんな都市伝説は好きだったしな。
日置さんが真剣な顔つきを俺に向ける。
!
結構可愛らしい子だな・・って、ロリコンじゃないぞ!
「へ、日置さん・・ほんとに信じられるの?」
「正直、完全に信用しろと言われると難しいかもしれませんが、実際にこんな変な世界になってしまいました。 何が起きても不思議ではありません」
「確かに・・」
「それに・・あの・・少しお聞きしてもよろしいですか?」
「うん」
「えっと・・言いたくなければ言わなくてもいいのですが・・その・・村上さんのスキルにナビゲーションシステムはありますか?」
「え?」
俺は少し返答が遅れる。
「あ、あぁ、あるけど・・どうかしたの?」
「あ、はい、その・・私のナビゲーションシステム、ナビさんが教えてくれたのです、何か特別なナビゲーションだとか・・」
俺は日置さんの言葉を聞いて少し驚き、ベスタに確認する。
「ベスタさん、あなたって特別なの?」
『はい、特別にあなた様仕様になっております』
「あのね・・ギャグを飛ばすところじゃないんだけど」
『いえ、ギャグなどではありません。 真実です』
「いや、俺の聞きたいのは・・」
『はい、心得ております。 おそらく彼女のナビゲーションシステムがそう言ったのでしょう。 彼女のシステムも進化して、アルテミスという名称を得ております』
「アルテミス・・ん? って、ベスタさん、どうして相手のシステムの名前がわかったの?」
『はい、私たちのシステムでは、前にお話ししたかもしれませんが、同族とはリンクできるのです』
「あ! そういえば、坂口団長の時に教えてくれたような・・忘れてた」
俺はベスタとの会話を終了し、日置さんを見つめる。
「日置さん・・今ね、俺のナビゲーションシステムに聞いてみたのだけれど、特別というより、俺仕様になっているらしいね」
「え? 村上さん仕様・・ですか?」
「うん・・って、誰でも個人仕様だよね」
俺も言葉がない。
「なるほど・・そう言われれば、誰でも特別ですね・・フフフ」
日置さんが笑っていた。
俺は初めて日置さんの緊張が解けた感じを見たのかもしれない。
少しホッとする。
とはいえ、本当に日置さんの言うように、単に個人レベルでの相違だけではないと思う。
アルテミスだったっけ?
その指摘は正しいと思う。
それに、俺と日置さんとでは、生きてきた時間が違う。
無駄に時間を過ごしたと思っていても、その重みはあるだろう。
・・・
・・
俺たちはしばらく他愛ない会話をすることができた。
◇
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