第125話 見たことあるぞ!


<楠木班長たち>


「真田助教、村上さんの話・・本当かしら?」

「私は本当だと思います」

「神様・・でしょ? それに、ドラコニアンって・・そんな種族が地底にいるなんて・・他にも爬虫類系の生命体が人間社会に混じっている・・どうやって見分ければいいのかしら?」

「班長・・とにかく、我々は知ってしまったのです。 そして、強くならなければいけないということです」

真田助教は前向きなようだ。

「そうね・・強くなれば、少なくとも爬虫類系などにいいようにされないわね。 さて・・坂口君にも教えてあげなきゃ」

「班長、それと遷都の件ですが・・」

「えぇ、わかっているわ。 村上さんには、あぁ言ったけど、実際は東のシステムと西のシステムで対立だわね」

真田助教が黙ってうなずく。

「ほんとに・・同じ日本人だから仲良くできないのかしら・・って、普通の人たちは西のシステム派よね? できないのは、今までお金で動いていた人たちよ・・全く・・」

「はい・・」

真田助教と楠木班長が難しい顔をしてしばらく沈黙が続く。

そのうち、楠木班長はスッと立ち上がり、「ちょっと坂口君のところへ」と言って事務所を出て行った。


<ハヤト>


俺は調査隊を出て、段議員に指定されたホテルに向かっていた。

「段議員・・このホテルのお得意様か?」

以前、パーティに招待されたホテルだった。

受付に行き、段議員の所在を聞く。

すると、受付が話しかけてきた。

「村上様ですね、お話は伺っております。 どうぞこちらへ」

受付の人が席を外し、俺をエレベーターに案内してくれる。

前はこんな感じではなかったが、セキュリティの関係か?


俺は素直に案内に従い、エレベーターに乗る。

指定階も受付が押してくれて、至れり尽くせりだ。


ピーン!

目的の階層の到着。

エレベーターのドアが開き、俺は一歩外へ出た。

すぐにガタイの良い黒服の男とスレンダーな女性が、俺に近寄ってくる。

「村上さんですね・・どうぞこちらへ」

ボディガードだろうか、微笑んでいるが俺を見定めている感じだ。

案内に任せて、とある部屋の前に到着。

ボディガードがドアを開けてくれた。

俺は軽く会釈してお礼を言い、中に入る。


「よく来てくれたね」

段議員が奥のソファーでゆっくりと立ち上がった。


<〇〇ダンジョン内>


ヒロと呼ばれた男、爬虫類系の種族だ。

「えっと・・ヒロでいいか?」

「あぁ、呼び名はどうでもいい。 人族の呼び名で十分だ」

「ヒロ、お前・・俺たちの素性を漏らしたんじゃないだろうな」

ヒロの前を歩いていた男が爬虫類系の眼差しで見つめる。

「いや、そんなはずはない。 俺もエサには十分注意している。 人社会のシステムの外れ(点々)者たちの組織に潜入して連れて来ている。 問題は起きてないはずだ」

「そうだよな・・俺たちのコロニーでは失敗はないはずだ。 他のコロニーではわからないが、ドラコニアンなどに狙われたら・・生きていけないぞ」

「それはわかっている。 だから細心の注意を払っているんだが・・この妙なシステム変化で、人種族が強くなっているようなんだ」

ヒロが真剣な口調で話す。

「フフ・・確かに以前よりは強く感じるが・・それでも問題はあるまい」


「・・まぁ・・な」

ヒロは曖昧に答えつつ考えていた。

仲間に言っても理解は得られないかもしれない。

遊撃隊として地表で動くのは俺の役目だ。

コロニー内にいる連中には外のことは理解できないだろう。

そして注意しても、議題に挙げてもらえるかどうか。

一応は議会に報告はしておかなければいけないだろうな、人種族が強くなっていると。


ヒロたちは荷物を丁寧に抱えたまま、ダンジョンをゆっくりと歩いていく。


<段議員>


俺は段議員にうながされ部屋の中を進む。

ソファに座るように指示され、座ろうとした。

・・・

誰?

いや、見たことあるぞ。


ソファにちょこんと座っている女の子がいた。


「村上君とは初見だったかな?」

段議員の言葉に女の子が立ち上がる。

「え、えっと・・日置大和へきやまとです」

女の子はそれだけ言うと、ソファに座ってしまった。


「は、はぁ・・あ、段先生、こんにちは・・それから日置さん、村上です」

俺が挨拶すると、また女の子は立ち上がる。

「は、はい、こ、こんにちは」

それだけ言うとまたソファに座る。

忙しい子だな。

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