第124話 これってセクハラになるのか?
「それと・・もう1つ、重要な案件というか・・信じてもらえないかもしれませんが・・・」
俺はそういって、ダンジョン7階層であったことを楠木班長に伝えてみた。
・・・
・・
「まさか・・そんなことって・・」
「班長・・自分は直感ですが、信じられますね。 なぜ人間・・いや、世界にレベルなんてものが発現し、ダンジョンなんてものが現れたのか、何となく腑に落ちます」
真田助教は受け入れたようだ。
「村上さん・・あなたいったい何者なの?」
楠木班長が真剣な
俺は思わずドキッとする。
こんな美人さんに見つめられることなんてなかったからな。
「い、いえ・・えっと、普通の自己鍛錬が好きな男ですよ」
「あのね・・普通でレベル27以上はあり得ないわよ」
「え、いや・・あの・・」
俺が返答に困っていると楠木班長が微笑む。
「フフ・・この話は、坂口君が好きかもね」
「坂口さんが、ですか?」
「あの人、結構オカルトマニアなのよ」
◇
<坂口恭二>
「へ、ヘ、ヘークション!」
坂口は大きなくしゃみをした。
「団長、風邪引きました?」
「いや、なんか鼻がムズムズしたんだ」
◇
楠木班長の話は続く。
「その話をすると、○○ダンジョンに飛んでいきそうね」
「あ、楠木班長・・その・・神様というか、管理者というか・・もういませんよ」
「「え?」」
楠木班長と真田助教が俺を見る。
「えっと、その・・いつの間にか居なくなってましたから。 それに地表世界を楽しむとか言ってましたね」
「はぁ・・なぁーんだ・・残念」
「班長、残念って・・もしかして、班長も行くつもりでした?」
真田助教が聞く。
「ま、まさか・・行くわけないでしょ」
・・
絶対に行く気だったんだな。
真田助教と俺は考えを共有したようだ。
「さてと・・楠木班長、真田助教、俺もすっきりしました。 もしかしたら信じてもらえないかと思ってましたから・・その・・ありがとうございます」
「何言ってるのよ。 こんな変な世界になってるんだから、何が起きても驚かないわ」
楠木班長の言葉に、真田助教も大きくうなずく。
そして、楠木班長がやや前のめりになりながら小さな声で話しかけてきた。
「村上さん・・もう知っているかもしれないけど、この調査隊ね・・京都に移転するのよ」
「え?」
俺は驚いた。
「い、移転って・・どういうことですか?」
楠木班長と真田助教が顔を見合わせてうなずく。
「そうね・・村上さんがアメリカから帰ってきたら、日本は分裂とまではいかないまでも、環境が大きく変わっているかもしれないわね」
楠木班長がそう言いながら説明してくれた。
・・・
・・
どうやら今までの社会システムの肯定派と改革派で、完全に意見が分かれたらしい。
それで実験的に政治システムを分散するという。
東京では今までの社会システム。
京都では新しい社会システム。
住む人たちには制限はなく、どちらのシステムに属しても良いらしい。
場所を離れられない人もいるだろうから、その地域で決めれるそうだ。
ギルドカードによって個人が限定されているので、社会手続きはそれほど問題ではないという。
ただ、社会保障などが大きく違ってくるそうだ。
それで経過を見て、国民が都合がよい方のシステムを選ぶという。
・・・
・・
「なるほど・・そんな変化があったのですね」
俺は大きくうなずく。
「まぁ、詳細はまだよく知らされてないけど、そのうち全国民に告知されるそうよ」
「私としては、調査隊のある京都システムの方が良さそうですね」
真田助教がうなずく。
「そうよねぇ、私もそう思うわ。 今、わかってるだけでも、生きていくのには不自由しなさそうなシステムだものね。 出来たら…だけど」
楠木班長がニコッとして俺に握手を求めてきた。
俺もしっかりと握手を返す。
「村上さん、頑張ってね。 死んだら、ダメよ」
「ありがとうございます。 ここに立ち寄って、本当に良かったです」
グッと楠木班長が俺を引き寄せて囁く。
「村上さんって、胸が好きなの?」
「え、い、いや・・その・・魅力的な女性の胸を嫌いな人って、いないんじゃないですか」
俺は
「えへん・・村上さん、その発言はセクハラと受け止められますよ」
真田助教が咳ばらいをしながら笑う。
楠木班長も笑っていた。
どうやら、俺をリラックスさせてくれたようだ。
俺はしっかりとお礼を言って、調査隊の事務所を後にする。
◇
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