第124話 これってセクハラになるのか?


「それと・・もう1つ、重要な案件というか・・信じてもらえないかもしれませんが・・・」

俺はそういって、ダンジョン7階層であったことを楠木班長に伝えてみた。

・・・

・・

「まさか・・そんなことって・・」

「班長・・自分は直感ですが、信じられますね。 なぜ人間・・いや、世界にレベルなんてものが発現し、ダンジョンなんてものが現れたのか、何となく腑に落ちます」

真田助教は受け入れたようだ。


「村上さん・・あなたいったい何者なの?」

楠木班長が真剣な眼差まなざしで俺を見る。

俺は思わずドキッとする。

こんな美人さんに見つめられることなんてなかったからな。

「い、いえ・・えっと、普通の自己鍛錬が好きな男ですよ」

「あのね・・普通でレベル27以上はあり得ないわよ」

「え、いや・・あの・・」

俺が返答に困っていると楠木班長が微笑む。

「フフ・・この話は、坂口君が好きかもね」

「坂口さんが、ですか?」

「あの人、結構オカルトマニアなのよ」


<坂口恭二>

「へ、ヘ、ヘークション!」

坂口は大きなくしゃみをした。

「団長、風邪引きました?」

「いや、なんか鼻がムズムズしたんだ」


楠木班長の話は続く。

「その話をすると、○○ダンジョンに飛んでいきそうね」

「あ、楠木班長・・その・・神様というか、管理者というか・・もういませんよ」

「「え?」」

楠木班長と真田助教が俺を見る。

「えっと、その・・いつの間にか居なくなってましたから。 それに地表世界を楽しむとか言ってましたね」

「はぁ・・なぁーんだ・・残念」

「班長、残念って・・もしかして、班長も行くつもりでした?」

真田助教が聞く。

「ま、まさか・・行くわけないでしょ」

・・

絶対に行く気だったんだな。

真田助教と俺は考えを共有したようだ。


「さてと・・楠木班長、真田助教、俺もすっきりしました。 もしかしたら信じてもらえないかと思ってましたから・・その・・ありがとうございます」

「何言ってるのよ。 こんな変な世界になってるんだから、何が起きても驚かないわ」

楠木班長の言葉に、真田助教も大きくうなずく。

そして、楠木班長がやや前のめりになりながら小さな声で話しかけてきた。

「村上さん・・もう知っているかもしれないけど、この調査隊ね・・京都に移転するのよ」

「え?」

俺は驚いた。

「い、移転って・・どういうことですか?」

楠木班長と真田助教が顔を見合わせてうなずく。

「そうね・・村上さんがアメリカから帰ってきたら、日本は分裂とまではいかないまでも、環境が大きく変わっているかもしれないわね」

楠木班長がそう言いながら説明してくれた。

・・・

・・

どうやら今までの社会システムの肯定派と改革派で、完全に意見が分かれたらしい。

それで実験的に政治システムを分散するという。


東京では今までの社会システム。

京都では新しい社会システム。

住む人たちには制限はなく、どちらのシステムに属しても良いらしい。

場所を離れられない人もいるだろうから、その地域で決めれるそうだ。

ギルドカードによって個人が限定されているので、社会手続きはそれほど問題ではないという。

ただ、社会保障などが大きく違ってくるそうだ。

それで経過を見て、国民が都合がよい方のシステムを選ぶという。

・・・

・・

「なるほど・・そんな変化があったのですね」

俺は大きくうなずく。


「まぁ、詳細はまだよく知らされてないけど、そのうち全国民に告知されるそうよ」

「私としては、調査隊のある京都システムの方が良さそうですね」

真田助教がうなずく。

「そうよねぇ、私もそう思うわ。 今、わかってるだけでも、生きていくのには不自由しなさそうなシステムだものね。 出来たら…だけど」

楠木班長がニコッとして俺に握手を求めてきた。

俺もしっかりと握手を返す。

「村上さん、頑張ってね。 死んだら、ダメよ」

「ありがとうございます。 ここに立ち寄って、本当に良かったです」

グッと楠木班長が俺を引き寄せて囁く。

「村上さんって、胸が好きなの?」

「え、い、いや・・その・・魅力的な女性の胸を嫌いな人って、いないんじゃないですか」

俺は咄嗟とっさに発言してしまった。

「えへん・・村上さん、その発言はセクハラと受け止められますよ」

真田助教が咳ばらいをしながら笑う。

楠木班長も笑っていた。

どうやら、俺をリラックスさせてくれたようだ。

俺はしっかりとお礼を言って、調査隊の事務所を後にする。


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