第123話 古巣へ
サラはマリアを送ってきたドライバーから書類を受け取り、中身を確認していた。
「うむ・・ダンの悲報は聞いている。 惜しい男を亡くしたものだ・・だが、僕も甘かったようだ。 まさか、あのダンジョンを攻略しようなどと考えることはないと思っていたのだ。 何度も放棄するように勧告はしていたのだが」
マリアは驚いた表情を見せる。
その表情を見てジョーがうなずく。
「なるほど・・マリア君は知らされてなかったのだろうね。 現政府の考えがよくわかったよ」
ジョーはサラを見た。
サラがうなずきながら書類をジョーに見せる。
・・・
「フフ・・どうも政府の連中は、我々を排除したいのだろうか。 どう思う、サラ」
「マイヒーロー、私にもわかりません。 ダンを失っても、まだあのダンジョンの恐ろしさがわかっていないようです。 それに今度はスペアコマンダーとして日本から召喚したとか・・意味がわかりません」
サラは少し怒っているようだった。
「うむ・・この書類にはそう書いてあるね・・そして、私とマリア、日本のコマンダーの精鋭でダンジョンの詳細を調査してくれとある。 これではまるで高レベル者を危険な目に合わせるように仕向けているみたいだね」
ジョーの言葉にサラがうなずく。
「はい、まさにその通りだと思います。 我々の存在が許せないのかもしれません」
「う~ん・・僕には理解できない発想なんだよね。 どうしてみんなでレベルを上げて快適な暮らしを考えないのだろうね。 どこかだけが突出して何をしようというのだろう」
「既得権益の亡者の考えそうなことです」
サラとジョーの会話に、マリアがクスッと笑う。
「ん? どうしたんだい、マリア?」
「い、いえ・・どこも行政というか、権力者の考えというか、同じなんですね」
ジョーが肩をすくめて笑う。
「さて・・日本からのお客さんを見てから判断しないといけないだろうが、僕たちはあの魔物に本気で対峙しなければいけないのかもしれないね」
ジョーはそう言いつつ、書類にサインをしてドライバーに手渡す。
「君、取りあえず調査には行くよ」
ドライバーは書類を受け取ると、車で待機するといってその場を後にした。
ジョーはドライバーがいなくなるのを確認すると、マリアにいろいろと話しかける。
◇
<ハヤト>
段議員の要請で、またも内閣調査隊のところに戻ってきていた。
勝手知ったる場所だ、遠慮なく素材班の事務所に押し掛ける。
「こんにちは~」
挨拶しつつ部屋に入る。
「あら? 村上さんじゃない・・元気にしてた?」
「はい、元気だけが取り柄です」
「フフ・・えっと、楠木班長だったわね。 今日来ることは伝えてるのに・・トイレかな?」
素材班の隊員たちが笑顔で接してくれる。
俺にとっては心地よい場所だ。
すぐに楠木班長が帰ってきた。
事務所に入ってくるなり笑顔で出迎えてくれる。
「村上さん、お久しぶり!」
「はい、お久しぶりです。 えっと・・紹介状、ありがとうございました。 とても助かりました」
俺はギルドの紹介状のお礼を言う。
「あ、あぁ・・あの資料ね。 役立ったのなら何より・・それよりも、いったいどうしたの?」
楠木班長が俺に座るように勧めてくれた。
俺はソファに座る。
楠木班長が俺の前に座った。
相変わらず美人で色っぽいな。
俺は思わず楠木班長の胸を見つめてしまった。
「えへん・・村上さん」
「あ、はい・・えっと・・何から話せばよいのやら・・」
俺はまずは段議員に呼ばれたことを伝える。
・・・
「そうなんだ・・アメリカねぇ・・なんで日本から人を呼ぶんだろうね?」
楠木班長が首を
楠木班長の後ろに真田助教がコーヒーを片手に近寄ってきた。
「班長・・私もそこが引っ掛かります。 妙ですよね? 調査隊員ではなく、村上さんを派遣するのがわかりません」
「そうなのよ・・別に調査隊員じゃなくても、自衛隊員や警察官などもいるはずなのに・・」
「段議員の絡みですよね・・あまりお勧めできる案件ではないですね」
真田助教と楠木班長が難しそうな顔をしていた。
「楠木班長・・私もそこまで詳しく考えもしませんでした。 ただ、何となくアメリカのダンジョンに興味があったものですから・・」
俺は軽く答える。
「アハハ・・なるほど。 村上さんらしいといえば、らしいわね」
楠木班長が大笑いをしていた。
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