第122話 ヒーローとの面会
<〇〇神社のダンジョン入り口>
ハヤトが8階層から帰って来た時に遭遇した連中が、まだ倒れていた。
一番初めに吹き飛ばされたヒロと呼ばれていた男が、軽く首を振り立ち上がる。
ヒロは辺りを見渡して首の辺りに手を当てた。
「痛てて・・くぅ・・何だ、あいつは? まさか俺が吹き飛ばされるとは思わなかった。 こんなシステムになって人間が強くなったのか? ありえねぇ・・いや、気をつけねばならないな」
ヒロはそうつぶやきながら、リーダーのところへと近づいていく。
「リーダー・・リーダー」
「・・う、うぅ・・」
ヒロは呼びかけ、生きていることを確認した。
「ホッ、よかった・・生きているな。 こうやってエサを定期的に運ぶのが俺の仕事だし・・」
ヒロはそう言いながら電話をかける。
・・・
「あぁ、俺だけど・・今、入り口にいるから・・9名かな? よろしく」
ヒロが電話をして3分くらい経過しただろうか、ダンジョンの中から2本足で歩くトカゲのような姿の生き物が5体現れた。
それらの生き物が、倒れている人たちを丁寧に拘束してダンジョンの中へ運ぶ。
最後尾からヒロが後をついて行った。
◇
<アメリカ>
マリアの衝撃は大きかったが、身体に異変はない。
宿泊している施設の係に人に、ジョーのことについて尋ねてみる。
・・
なんの支障もなくジョーの情報が手に入った。
マリアはジョーに会いに行きたい旨を伝えると、案外簡単に許可された。
肩透かしを食らったような感覚だが、とにかくこの機会を逃すつもりもない。
マリアは用意された車に乗ってジョーのところへ向かう。
◇
大統領府、いや政務官はマリアの動向などどうでもよかった。
既に作戦は失敗をしている。
ただ・・だからこそか。
ケンタウルスのいるダンジョンに固執するようになっていた。
是非とも何かを手に入れたい。
とはいえ、レベル30のダン隊長が亡くなったのは事実だ。
それに武器が通用しなかったという。
相手はそれほどまでに強大なのか?
「大統領・・マリアがジョーのところへ向かったようです」
「うむ、聞いている。 彼は世界のヒーローなのだから・・よいではないか。 それよりも補佐官・・これほどの被害が出たのだ、もうあのダンジョンにはこだわらなくてもよいのではないのか?」
大統領は至極まっとうな見識の持ち主らしい。
補佐官は軽く鼻で笑うと、
「フフ・・大統領、我々も被害の拡大は望みません。 マリアもそうですが、日本にも打診してみました」
大統領が驚いた顔を見せる。
「補佐官・・それではあまりにも・・」
「大統領・・あの国は中国海軍を壊滅させる力をつけたのです。 これからの世界で突出させるわけにはいきません。 世界は我々がコントロールするのです」
補佐官はギラついた目つきで力説する。
マリアとジョー、日本からの人間たちで攻略させようと考えていた。
これで失敗しても、我々は痛むことはない。
それにジョーも今度は出撃をするだろう。
・・・
補佐官の瞳が、まるで爬虫類のギラつきを見せつけていた。
◇
<ジョー>
ジョーたちが暮らしている施設の門に、マリアを乗せた車が到着。
軽くチェックを受け、車が通過。
マリアは何も発言せず、シートに背中を預けていた。
車がジョーたちがいるであろう庁舎に到着。
マリアが車から降りようとすると、一人の女性が微笑みながら出迎えてくれる。
「ようこそいらっしゃいました。 私はサラと申します・・その・・マリアさんですね」
サラは慎重に話す。
マリアはうなずくと、サラに案内されて庁舎の中に入っていく。
車の運転をしていた者も車から降り、大統領補佐官から預かっている書類を持って後を追う。
マリアはサラの後について歩いていた。
庁舎内は明るい雰囲気で人が行き交っている。
「よう、サラ」
「チース!」
「お疲れ!」
「サラ、その美人さんは誰?」
・・・
みんなが軽い口調で話しかけてきた。
サラは笑顔で適当に返答し、マリアをジョーのところへ案内する。
マリアはついにヒーローのジョーと対面することになった。
普段、緊張など無縁のマリアだが、動きがぎこちない。
「は、初めまして・・私は、スイスから応援で来たマリアと言います」
マリアの挨拶を受け、ジョーは微笑むと座るように
ジョーもゆっくりと席に着き、マリアに話しかける。
「よく来てくれた、僕はジョーという。 マリア君・・今回はとても残念な結果になったようだが・・」
「い、いえ・・私も警戒を怠っていたのかもしれません。 それに、隊長のダンが命を犠牲にして私たちを逃がしてくれたのです」
マリアはどう返答していいのかわからなかった。
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