第122話 ヒーローとの面会


<〇〇神社のダンジョン入り口>


ハヤトが8階層から帰って来た時に遭遇した連中が、まだ倒れていた。


一番初めに吹き飛ばされたヒロと呼ばれていた男が、軽く首を振り立ち上がる。

ヒロは辺りを見渡して首の辺りに手を当てた。

「痛てて・・くぅ・・何だ、あいつは? まさか俺が吹き飛ばされるとは思わなかった。 こんなシステムになって人間が強くなったのか? ありえねぇ・・いや、気をつけねばならないな」

ヒロはそうつぶやきながら、リーダーのところへと近づいていく。

「リーダー・・リーダー」

「・・う、うぅ・・」

ヒロは呼びかけ、生きていることを確認した。

「ホッ、よかった・・生きているな。 こうやってを定期的に運ぶのが俺の仕事だし・・」

ヒロはそう言いながら電話をかける。

・・・

「あぁ、俺だけど・・今、入り口にいるから・・9名かな? よろしく」


ヒロが電話をして3分くらい経過しただろうか、ダンジョンの中から2本足で歩くトカゲのような姿の生き物が5体現れた。

それらの生き物が、倒れている人たちをしてダンジョンの中へ運ぶ。

最後尾からヒロが後をついて行った。


<アメリカ>


マリアの衝撃は大きかったが、身体に異変はない。

宿泊している施設の係に人に、ジョーのことについて尋ねてみる。

・・

なんの支障もなくジョーの情報が手に入った。

マリアはジョーに会いに行きたい旨を伝えると、案外簡単に許可された。

肩透かしを食らったような感覚だが、とにかくこの機会を逃すつもりもない。

マリアは用意された車に乗ってジョーのところへ向かう。


大統領府、いや政務官はマリアの動向などどうでもよかった。

既に作戦は失敗をしている。

ただ・・だからこそか。

ケンタウルスのいるダンジョンに固執するようになっていた。

是非とも何かを手に入れたい。

とはいえ、レベル30のダン隊長が亡くなったのは事実だ。

それに武器が通用しなかったという。

相手はそれほどまでに強大なのか?


「大統領・・マリアがジョーのところへ向かったようです」

「うむ、聞いている。 彼は世界のヒーローなのだから・・よいではないか。 それよりも補佐官・・これほどの被害が出たのだ、もうあのダンジョンにはこだわらなくてもよいのではないのか?」

大統領は至極まっとうな見識の持ち主らしい。

補佐官は軽く鼻で笑うと、

「フフ・・大統領、我々も被害の拡大は望みません。 マリアもそうですが、日本にも打診してみました」

大統領が驚いた顔を見せる。

「補佐官・・それではあまりにも・・」

「大統領・・あの国は中国海軍を壊滅させる力をつけたのです。 これからの世界で突出させるわけにはいきません。 世界は我々がコントロールするのです」

補佐官はギラついた目つきで力説する。

マリアとジョー、日本からの人間たちで攻略させようと考えていた。

これで失敗しても、我々は痛むことはない。

それにジョーも今度は出撃をするだろう。

・・・

補佐官の瞳が、まるで爬虫類のギラつきを見せつけていた。


<ジョー>


ジョーたちが暮らしている施設の門に、マリアを乗せた車が到着。

軽くチェックを受け、車が通過。

マリアは何も発言せず、シートに背中を預けていた。

車がジョーたちがいるであろう庁舎に到着。

マリアが車から降りようとすると、一人の女性が微笑みながら出迎えてくれる。

「ようこそいらっしゃいました。 私はサラと申します・・その・・マリアさんですね」

サラは慎重に話す。

マリアはうなずくと、サラに案内されて庁舎の中に入っていく。

車の運転をしていた者も車から降り、大統領補佐官から預かっている書類を持って後を追う。


マリアはサラの後について歩いていた。

庁舎内は明るい雰囲気で人が行き交っている。

「よう、サラ」

「チース!」

「お疲れ!」

「サラ、その美人さんは誰?」

・・・

みんなが軽い口調で話しかけてきた。

サラは笑顔で適当に返答し、マリアをジョーのところへ案内する。


マリアはついにヒーローのジョーと対面することになった。

普段、緊張など無縁のマリアだが、動きがぎこちない。

「は、初めまして・・私は、スイスから応援で来たマリアと言います」

マリアの挨拶を受け、ジョーは微笑むと座るようにうながす。

ジョーもゆっくりと席に着き、マリアに話しかける。

「よく来てくれた、僕はジョーという。 マリア君・・今回はとても残念な結果になったようだが・・」

「い、いえ・・私も警戒を怠っていたのかもしれません。 それに、隊長のダンが命を犠牲にして私たちを逃がしてくれたのです」

マリアはどう返答していいのかわからなかった。

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