第117話 マリア達


ハヤトにはまるで止まっているように見えていた。

「う~ん・・それにしても、いきなり刃物を人に突きつけるってどうなの? こんなクズどもの相手の時じゃないが・・どう思う、ベスタさん?」

『ハヤト様、ご自由になさってよろしいかと思います』

「ベスタさん・・だんだんと過激になってくるよね?」

『そんなことはありません。 あなた様の性格に染まっているのです』

「あ! ベスタさん、そういうことを言う?」

『はい、それは言わせていただきます』

・・・

ハヤトとベスタが色々と会話しているが、男たちはスーパースローモーションよろしく、先程からほとんど動いていない。


「さて・・」

ハヤトはふぅと息を吐くと、右手に軽く気を込める。

右手周辺が金色のような白いような光の膜に覆われる。

かなり気合を入れて気を込めれば、すさまじいダメージを与えることができ、手刀で切ればそこら辺の剣よりも切れ味は良い。

ドドドドドン!!!

そして、最後に社長と呼ばれた男の鳩尾みぞおちに右拳を叩き込む。

ゆっくりと男たちから距離を取る。

男たちは、まだハヤトに襲い掛かろうとしている動作の最中だった。


ハヤトが手の光を解除させ、一呼吸取る。

「ふぅ・・」

「「おらぁ!」」

男たちがハヤトがいたであろうところへ集まろうとしながら、2歩ほど歩くとヨロヨロとして地面に崩れ落ちた。

「「ぐぇぇぇ・・」」

「ごぼぉ!」」

「「うぐぅ・・」」

男たちはうめき声を出し、そのまま前のめりに倒れ込んだ。


社長と呼ばれた男も、いきなり胃の辺りが重く感じたかと思うと、息がしづらくなる。

「な、なん・・? 」

社長はそのままガクンと膝をつく。

全員がお尻を突き出して倒れていた。

「ま、全員死んでないようだし、放置でいいだろう。 フフ、まるでオーガのような倒れ方だな」

ハヤトはチラッと男たちを見て、そのままダンジョンを後にする。


<アメリカ>


マリアを加えた、俗にいう外人部隊。

レベルの高いものを揃えただけの集団だ。

マリアがレベル29。

他の隊員たちはレベル27~30といったところだ。

今の世界ではトップクラスに位置するのは間違いない。

元アメリカ海兵隊の特殊部隊のダン<レベル30>が指揮をる。


ダンはテキパキと要点だけを指示し、後は部隊の動きを見ていた。

マリアは後方に配置されるが、ダンたちとの行動は気持ちがいい。

よく訓練されたリーダーのようだ。

指示されたダンジョンを進んでいると、ダンが静かに右手を挙げる。

皆が即座に歩くのをやめた。

ダンが片手で前方を指さして、マリアに牽制かつ撃てと指示を出す。

マリアは静かに銃を構え、ダンの指示した方向を見つめてスキル、ホークアイを発動。

・・

確かに3匹のオーガがいる。

そして、その後ろにオーガジェネラルが2体・・さらにオーガキングが控えているようだ。

マリアはホークアイにより、オーガキングに照準を設定。

そして、銃のスコープを覗く。

これで確実にターゲットにヒットする。

自然と呼吸を整えて、迷わずに引き金を引く。


ドン!!


見事にオーガキングの頭が吹き飛ぶ。

オーガジェネラル、そしてオーガたちはまだ気づいていない。

マリアは次弾を放つ。

今度は前方のオーガ1体に照準を定め、発射!

オーガ1体の頭が吹き飛んだ。

横に並んでいたオーガが辺りを警戒する。

オーガジェネラルも前方の異変に気付き、オーガに近寄っていく。

ここで、ダンが全員に突撃の指示を出す。

・・・

・・

隊員たちは危なげなくオーガと討伐。

討伐中、自分たちの戦力では危ないと感じたのだろうか、オーガジェネラルが後方を確認。

だが、キングはすでに倒れていた。


マリアは銃を眺めながら感心していた。

魔石で改造された銃は、これほど性能が上がるのかと。

戦艦の大砲以上の威力があるだろうと推測。

試射の時にはわからなかったが、自分のスキルとの併用で凄まじい威力を発揮するようだ。


オーガたちの討伐が終わり、ダン隊長は隊員たちを確認する。

「うむ・・皆、見事だ。 このまま進んで行こうと思う、大丈夫か?」

「問題ありません」

「問題なし」

・・

ダンジョンに入り、6階層に到達していた。

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